『図書館を学問する』 佐藤翔 25-87-3483
雨が降ると図書館に来る人は増えるのか、減るのか
愛知県「田原市中央図書館」と、東京都「江東区江東図書館」のデータの比較があり、雨の日の来館数の減少は江東区の方が大きいという結果が示されています。そりゃ、車社会の愛知県とそうでない東京の図書館を比較したらこうなるのは当然です。わたしは江東図書館へは何度か行ったことがあるのですが、有名な商店街「砂町銀座」のそばにあるこの図書館の駐車場は小さく、徒歩か自転車で来館する人がほとんどです。雨が降ったら、自転車で行く人はグッと減ります。
図書館が多くの人に利用されるかどうかは、立地が大きなファクターになるはずです。地方都市なら大きな駐車場があれば、少し遠くても、雨でも行けますが、都会の場合は公共交通の便がいいかどうかが大事です。そういう所は、図書館情報学では、どう解析するのでしょうか。
石川県穴水町では、地元の考古学研究者が調律図書館に寄贈した図書約2200冊のうち、約1900冊を図書館が廃棄し、寄贈者に抗議されるという事件がありました。2005年に資料を受け入れましたが、07年に能登半島地震があり、図書館も被害を受けて倉庫などに資料を一時移し、それを新図書館に引き継ぐときに、スピースが小さいし利用頻度が低いので、本の大半を処分してしまった、ということでした。
また、17年には京都市の右京中央図書館で、フランス文学者・桑原武夫が遺した資料約1万冊強がやはり図書館によって破棄されていたことが発覚し、責任を負った職員が処分を受けています。この資料は当初、京都市国際交流会館に寄贈されて一般公開していたそうですが、右京中央図書館が新たにオープンした際にそちらに移管し、しかし実際には置き場所がなく、別の建物の倉庫においていたもももそこでもスペースがなくなり、廃棄された・・・ということです。P24
本を保管する場所が足りず破棄するという判断は、確かに困った話ですが、そうなったきっかけが、本を管理する組織が変更されたからというところが気になります。
・最初に受け取った組織での考え方が、次の組織へ引継ぎされていないのではないか?
・廃棄する前段階で倉庫に入れっぱなしで、もはや資料ではなく「不要なもの」という判断が生まれていたのではないのか?
・廃棄する段階で、寄贈者や最初に受け取った組織と相談していなかったのか?
・古書店なども含めて、資料を引き取ってくれる所を探したのか?
などなど、実際の所どうだったのでしょうね。本や資料に関するリスペクトのなさを感じて悲しいです。
図書館をありがたく使わせていただいている身としては、蔵書のことも気になりますけど、それよりも図書館で働く方たちの待遇の悪さをひしひしと感じます。公立図書館であっても、そこで働いているのは公務員ではなく非正規労働者ばかり(約7割)という点を、図書館情報学では扱わないのでしょうかね?
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