『たまもの』 神藏美子 25-73-3469
ある夜、「好きな人ができたから家を出ようと思う」と泣きながら坪内に言った。「美子ちゃんはアーティストなんだから好きにすればいい」と坪ちゃんが言った。~中略~
坪ちゃんは「美子ちゃんが幸せでいてくれればいい」と言って、好きな人が誰かなど一切聞かなかった。
写真家の神藏美子は当時、評論家坪内祐三と結婚していたけれど、編集者末井昭のことが好きになってしまったところから、不思議な三角関係が生まれたのです。
神藏と末井が親しくなったきっかけが女装の写真撮影で、亀戸のエリザベス会館へいく話が出てきます。割と近くに住んでいたので、ちょっと懐かしい気分になってしまいました。
自我についてあれこれと考えるようになったのは、末井さんと坪内がとてもタイプの違う二人で、その極端な両方の狭間で自分自身が右往左往していたからだ。狭間というのは正確ではない、わたしは末井さんと暮らしていたのだから。でも、狭間にいると感じるくらいに、坪内の存在や影響力が大きくなっていた。
坪内のことが嫌いになって浮気したというわけではないので、週に1~2回くらい会っていた2人。末井との会話の中にも坪内の話が良く出てきたというくらいだから、坪内の存在はかなり大きかったんだろうな。この本の中にはいろんな写真が登場するのだけど、3人で仲良く映っている写真もあったりして、こういう三角関係って不思議。
事実、末井はかなりコンプレックスを感じていたようだし、坪内は寂しがっていたみたいだし、2人の間で神藏はユラユラしている感じだし、ケンカにならないからこその微妙な感じが「小説より奇なり」って感じだなぁ。
坪内が大けがをして入院した時に、神藏がためらいながらもすぐに病院へお見舞いに行っているあたり、やっぱり友達以上だよね。
坪内と末井、それぞれに全然違う魅力があるから、どっちも好きという感情が、この本全体に溢れてる。やっぱり、恋愛は理屈じゃないんだよね。
3469冊目(今年73冊目)
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