『長い読書』 島田潤一郎 25-102-3498
島田さんは、小学生の頃は仲の良い友達がいたけれど、基本的には他人との関りがあまり得意ではない方だったようです。その分、本との付き合いが深くなっていったのかもしれません。様々な本を読むうちに、自分で小説を書くようになり、大学を卒業してからも就職せず、小説家を目指していたそうです。
わたしの友人にもミュージシャンになりたいとか、俳優になりたいとか、バイトをしながら目標に向かって頑張っていた人が何人もいました。わずかな人たちが夢を叶えましたが、ほとんどの人たちは、30歳になったとか、親が病気になったとか、死んだからといったタイミングで夢を諦めていきました。
島田さんも小説家になるという夢を捨てて会社員になりました。それまでは、あんなに本を読んでいたのに、会社員になってからは、すっかり読めなくなったそうです。そんな月日が、彼に今の仕事を思いつかせたのかもしれません。やっぱり本に関わる仕事をしていきたいと。
この本の中には、本が大好きでしょうがない島田さんがいます。難しい本を必死に読んでいたり、物語の登場人物に自分を重ねたり、本を読めなかった時期だって、決して本が嫌いになったわけじゃなくて、残業後に閉店間際の本屋さんへ駈け込んで、本棚をながめ、文庫本を買って帰ります。その本がずっと積読になってしまっても、本が自分のそばにあるということが安らぎになっていたのかもしれません。
この本のタイトルにもなっている「長い読書」は、とても印象的でした。遠くに住む認知症の義父を見舞いに行くために電車に乗る時間が、島田さんにとって、ゆっくりと本が読める「長い読書」の時間だったという話です。
わたし自身のことを思い出しました。認知症の母の家へ行った後、電車に乗る時間は10分ほどでしたけど、ホームのベンチで長時間本を読むことがよくありました。そこで気持ちをリセットしないと、家へ帰れないことが何度もあったのです。
島田さんの文章を読むうちに、本を読むということは、自分の心の糧なのだと気づきました。これを取られたら、わたしは生きていけないかもと思うのです。
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