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『無敵のハンディキャップ』 北島行徳 25-98-3494

Mutekinohand

無敵のハンディキャップ

北島行徳(きたじま ゆきのり)

筑摩書房

 北島さんが障害者プロレス「ドッグレッグス」を立上げたのは、障害者に対する社会の無関心さを何とかしたいという思いからでした。「障害者も健常者も同じ人間」と建前では言うけれど、障害者を見たこともない人が世の中のほとんど。生まれた時からの障害者もいれば、後天的に障害者になった人もいる。脳性まひ、知的障害、視覚障害、脊椎損傷、障害の種類も程度も様々。そういう人たちをどう共存していくのかを考えるには、まず、どんな人がいるのかを見るところからだと思ったのです。

 そしてもう一つ、世間が持つ障碍者に対するイメージが間違っているという点も、この本の中で語っていきます。障害に負けずに頑張ってますと笑う障害者なんて、ほんの一握り。健常者と同じように、女が好きで、酒が好きで、嘘つきで、しょうもない奴も大勢いる。子どもの頃からずっと、真面目に、礼儀正しくしていないと、介護してもらえないでしょ、世間で生きていけないでしょって、いつもいつも言われてる。でも、それをできない人間がいるんだってね。

 そんな障害者像をぶち壊したくて障害者プロレスを始めたら、やってみたいという人が集まってきました。

 プロレスをやるようになって、生きているのが楽しくなったっていうのに、プロレスなんかやって、障害がもっと酷くなったらどうする? 障害のある身体を人目に晒して恥ずかしくないのか? そんな風に、家族や親戚から文句を言われてしまう人もいます。その箇所を読んでいる時、わたし自身「女だから」と言う理由で、くやしい思いをしたことを思い出し、無性に泣けてきました。障害者になりたくてなったわけじゃないのに、それを恥ずかしいことと思ってる他人のエゴで止めろって言われるのは、余りに理不尽だ!

 

 この本の「文庫版のためのあとがき」で、後楽園ホールが会場を貸してくれなかった話が出てきます。「日本人の障害者理解なんて、本当に上っ面だけなのだ」と北島さんは怒っています。最後はいつも「もしも事故が起きたら大変ですから」で逃げてしまうのだから。

 「解説 祈りにも似た感動」はドッグレッグスのリングにも上がったことがある齋藤陽道さんが書いています。聾者である彼も、聾以外の障害者に接する機会がなく、ここで出会った人たちとの交流の中で、「リングの上には、健常者も障害者もなく、ただの人間同士としてのせめぎ合いによる生の深みから吹き上がる感動があった。」と語っています。それこそが北島が望む世界なのだと、わたしは思うのです。

 齋藤さんの「声めぐり」で知ったこの本から、障害者に対する世間の冷たさをひしひしと感じました。優生保護法は禁止されても、そういう思想は社会の中に深く根付いているのだなと感じるのです。

3494冊目(今年98冊目)

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