『幻覚の脳科学』 オリバー・サックス 25-108-3504
幻視、幻聴、幻覚など、 ほとんどの人がそういう体験をしたときにビックリするのです。それを幽霊と勘違いすることもあるし、神のお告げと思う人もいます。周りの人には何も見えていないのに、本人にだけハッキリと見えたり、聴こえたりする、そういう事象を誰かに話したとき、まったく理解してもらえないことが多く、医師からも理解されず、精神障害だと診断されてしまう場合も多かったのです。
サックス医師は、そういう患者の声を真摯に聞きました。丁寧に聞き取りをし、「わたしにもそういう経験があります」と言ってくれるのです。彼はそういう現象があるということに興味を持ち、治療のための薬物で幻視などが起きることを実体験したこともありました。ケガをして自分の足が自分の足でないという感覚を持ったこともありました。(左足をとりもどすまで)
視力が低下、あるいは失明しているのに、実際には存在しないものが見える症状「シャルル・ボネ症候群」は、心理物理学的な視覚障害の一種です。また、真っ暗な地下牢に閉じ込められるなど、長期にわたる「感覚遮断」によって幻覚が起きる「囚人の映画」という現象も幻視を生みます。この現象については萩尾望都が書いた「スロー・ダウン」(「ひきこもり図書館」)を読むととてもよくわかります。
この本の中で、「脳の中の幽霊」の V・S・ラマチャンドラン博士の名前も登場しました。そうでした、わたしは幻視というものをこの本で知ったのでした。
わたしたちが見ていること、聴こえていること、感じていることは、実際にあるものと同じというわけではありません。それは脳が作り出しているデータです。実際には見えていないものを脳が補完している場合もあるし、まったく存在しないものを作り出している場合もあります。
ですから、環境が変わったり、心配事が解消されると、消えてしまうこともあります。一生消えないものもあります。
わたしたちの脳の中で何が起きているのかはよく分からないけれど、不思議な現象が起きるのは確かです。脳に翻弄されたり、助けられたり、だからこそ、脳について知るのは面白いのです。
3504冊目(今年108冊目)
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