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『八犬伝 下』 山田風太郎 25-90-3486

Hakkenden2

八犬伝 下

山田風太郎(やまだ ふうたろう)

角川文庫

2025年大河ドラマ「べらぼう」

 下巻を読み終わり、朝ドラ「らんまん」で牧野博士の妻、寿恵子さんが「南総里見八犬伝」を愛読していた気持ちがよくわかってきました。バラバラに暮らしていた八犬剣士が巡り合うこと。それまで知らなかった「縁」によって結びついていること。それはそれは荒唐無稽だけど、実に面白いお話です。

 

 虚の世界である小説を書くために、実の世界に住む馬琴は何があっても書きつづけました。息子が死に、老いた妻はずっと床に伏せり、それでも孫には武士としての将来をと考えた馬琴一家は神田同朋町から四谷信濃坂へと引越ししてきました。当時のこの辺りは辺鄙なところで、夜にひとりで歩くのは物騒な所であったようです。でも、家から一歩も出ずに執筆し続けている馬琴にとって、そんなことはどうでもいいことだったようです。

 物語を北斎に聞いてもらっていたのですが、なぜか北斎が馬琴宅を訪れてこなくなり、たまたま訪れた渡辺崋山に聞いてもらった箇所では、崋山という人の好い人柄を感じます。とはいえ、表現方法は違っても崋山も北斎も馬琴の物語を高評価しているところは同じです。そして、嫁のお路に聞いてもらった時、寝たきりであるはずの姑が悪口を言いに来るところは、いやいや、この家の闇は深いなと感心してしまいました。

 

 物語の終盤になって大きな問題が起きます。馬琴は、それまで片目で執筆していたのですが、ついに両眼が見えなくなっってしまったのです。そのピンチを助けてくれたのがお路でした。かな文字しか書けない彼女に漢字を教えながら口述筆記するのは、さぞかし大変だったでしょうが、二人三脚で物語を書きあげたのです。

 お路さんの話は「曲亭の家」で知っていたのですが、彼女の力なくして「南総里見八犬伝」は完結できなかったということは間違いありません。

 とにかく完璧主義者、嫌なことは絶対にしない、だけど面白い物語を書く。馬琴という大天才は、北斎が言う通り「こんな堅物がどうして、こんなにも荒唐無稽で面白いものを書けるのか」という人だったのですね。

 

 最後まで愚痴を言い続けていた馬琴の奥さんは、神田の家の家付き娘だったと最後の方でわかりました。「だから。あんなに威張ってた」のです。生涯家事は何もせずに暮らしていた、わたしの祖母のようで、そりゃ大変だったわと馬琴さんに同情したり、悪妻がいたからこそ執筆に集中できたのかなとも思ったり。実の世界の方が虚の世界よりも奇なりというところが、実に面白かったです。

・虚の世界 犬士出現(承前)
・実の世界 神田同朋町(かんだどうぼうちょう)
・虚の世界 犬士漂泊
・実の世界 神田同朋町
・虚の世界 犬士漂泊
・実の世界 神田同朋町
・虚の世界 犬士漂泊
・虚実冥合 四谷信濃坂

 

犬塚信乃(いぬづか しんの)
犬川荘助(いぬかわ そうすけ)
犬山道節(いぬやま どうせつ)
犬飼現八(いぬかい げんは)
犬田小文吾(いぬた こぶんご)
犬江親兵衛(いぬえ ちかべえ)
犬坂毛野(いぬさか けみの)
犬村大角(いぬむら おおかく)

3486冊目(今年90冊目)

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