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『エステルの手紙教室』 セシル・ピヴォ 25-139-3535

Esuteruno

エステルの手紙教室
Le lettere di Esther

セシル・ピヴォ
Cécile Pivot

田中裕子(たなか ゆうこ)訳

講談社

NetGalleyJP

フランス

北フランスのリールで書店を営むエステルは、亡くなった父を偲んで手紙教室を開くことにした。
参加者を募る新聞広告を出すと、5人から応募があった。孤独な老婦人、重度の産後うつに苦しむ夫婦、仕事にやりがいを見いだせないビジネスマン、そして進路に悩む青年。性別も年齢も異なる参加者とエステルは、手紙のやりとりを通して新しい言葉との出会いに飛び込んでゆく。

 見知らぬ人と文通するということに、みんな最初は戸惑いを持っていました。自分とは全然違う人生を歩んできた人に、自分の言葉が伝わるのかどうか不安だったのです。どんな話題を手紙に書けばいいのかわからないし。そんな悩みは、主催者のエステル与えてくれたテーマに助けられました。

 最初のテーマは「あなたは自分の中の何と戦っているのか」でした。

 

 手紙という形をとっていますけど、実は自分自身との会話です。自分がこれまで何を頑張ってきたのか。それは誰のためだったのか。自分は自分を大事にしてきたのか。手紙を読んだ相手は、それに対してこう感じたとか、自分はこうだったとか、という返事を書きます。全く違う悩みを持った人との手紙での会話だったはずなのに、いつの間にか感情が交錯していきます。

 

 産後うつになってしまった女性の心の叫び、今まで誰にも言えなかった深い傷を吐き出すこと、そのために手紙はとても大きな役割を果たしました。それを見つめる夫と夫の母、彼女の両親の苦悩も、つらいけど心惹かれました。

 孤独な老婦人が作っていた「諦めてしまったものリスト」にハッとしました。体力的に無理だと諦めたこと、気力が持たないと諦めたこと、その数々は、本当に不可能なことだったのかしら? 

 進路に悩む青年が、若くして亡くなった兄の本棚で見つけた「風の電話ボックス」の話に心惹かれた部分では、涙が溢れてきました。

 多忙なビジネスマンが忙しさを言訳にして、これまで無視し続けてきた自分の人生。それでいいのか?

 主催者のエステルも気がつかないうちに重荷を背負っていたのですね。6人の手紙のやり取りの中に、こんなにも本音で語り合うことができるなんて羨ましいと思いながら読んでいました。

 これまで無意識に封印していたものが、自分自身を苦しめていたとわかったからこそ、堂々と言えるようになったのです。

 わたしの人生は誰のためのものなのか? わたし自身のためのものだ!

#エステルの手紙教室 #NetGalleyJP

3535冊目(今年139冊目)

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