『ぼく、バカじゃないよ』 藤野千夜 25-137-3533
ぼくは、とっちゃんです。5歳でお兄ちゃんです。
お父さんとお母さんと、ひーくんが家にいます。ひーくんは3歳で弟です。
とっちゃんは、しゃべるのが苦手です。こういう風に思ってるんだけどなぁということを、うまく言葉にできないんです。それに慣れているお母さんや保育園の先生は「〇〇なの?」と聞いてくれるから、首を振ったり、横を向いたりして気持ちを伝えることはできるけど、それ以上の細かいこと、何で嫌なのかとかの説明はできないんです。
家に遊びに来たおばあちゃんだけは、とっちゃんと上手くおしゃべりができます。なぜかって?おばあちゃんはとっちゃんに命令してこないから。ちゃんと、とっちゃんと向き合ってくれるからなんだよ。
お母さんやお父さんは、「お兄ちゃんだから、弟のめんどうみてね」とか「早く着替えなさい」とか、いろんなことを命令してきます。いつも同じことを言われるのはイヤだけど、その時によって言うことが変わるのはもっとイヤです。心の中で「この間と同じことしてるだけなのに、どうして今日は怒られるの?」って思ってるけど、それをどう説明していいのかわかりません。
とっちゃんは、きっとゆっくりと大きくなっていく子なのに、周りの子たちと同じようにできないということばかりが指摘されてしまうんです。とっちゃんがつぶやいていることばの中に、「そうだよね」と思うことがたくさんありました。
うまく説明できないばっかりに、ドンドン追い込まれてしまうとっちゃん。切なくて、苦しくて、泣きたくなるのはあたりまえだよね。大人って、どうしてあんなに勝手なんだろう? いらないって言ってるものをグイグイ押し付けてくるのはなぜなんだろう? 真剣に聞いているのに、どうしてちゃんと答えてくれないんだろう?
とっちゃんみたいな大人もきっと大勢いるよね。結論ばっかり急いで、ちっとも人の話を聞いてくれない「声の大きな人たち」にペシャンコにされてしまっている人たちがいるってこと。親とか、先生とか、上司とか、偉そうなこと言う人たちにわかって欲しい。
そして、一番大事なのは、とっちゃんのおばあちゃんみたいに、ちゃんと分かってくれる人が増えるといいなぁってこと。そんなに難しいことじゃないと思うんだけど、そんなことも考えずに人のことをバカっていうのって、本人がもっとバカなんだよね、きっと。
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