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『チョンキンマンションのボスは知っている』 小川さやか 25-135-3531

Chonkin

チョンキンマンションのボスは知っている

小川さやか(おがわ さやか)

春秋社

2020年
第51回 大宅壮一ノンフィクション賞 受賞
第8回 河合隼雄学芸賞 受賞

 小川さんは文化人類学のフィールドワークのために香港のチョンキンマンション(重慶大廈)にやって来ました。といっても、中国人に興味があったわけではありません。この地でビジネスをしているタンザニア人たちに興味があってやって来て、ラッキーなことに、ここのボスであるカラマというおっさんに気に入られてしまったのです。どうして気に入られたかって? 彼女はスワヒリ語を話すことができたからなんです。

 タンザニアの天然石を売るという商売から始めたカラマさん。現在は中古車のブローカーの仕事がメインのようです。それ以外にも、商売になることなら何でもします。スマホを扱ったり、外国から香港へ仕入れに来た人の案内や通訳、宿の手配などをすることもあります。

 日本で仕事をしていたことがあるパキスタン人の中古車業者は、いつも約束の時間に遅刻するカラマさんに、「約束を守ることが第一」と説教するんだけど、ちっとも治りません。ボスだけどダメダメな奴なのかなぁと小川さんは思っていたのですが、ある時わかったのです。「あいつは何でも言われたとおりにキチっとやる」と思われたら、なめられる原因になるとカラマさんは言うのです。

 

「私があなたを助ければ、だれかが私を助けてくれる」という原則は、わたしが香港のタンザニア人の社会的世界を紐解くために関心を持っている原則そのものである。P250 

 タンザニアから来た同胞の手助けをすることも、彼にとっては大事なことです。お金がない人にはご飯を食べさせ、住むところがない人を居候させてやるし、仕事の紹介もします。初めて会った人であっても、ためらうことはありません。だって、それは当り前のことだから。

 帰省する時にスーツケースに隙間があったら、誰かの荷物を運んであげることもあるし、買物を頼まれたり、頼んだり、時にはお金まで運んじゃうという「ついで」の感覚がすごいです。個人的なことでも仕事でも、「ついで」にできることなら喜んでやりましょうという考え方は、「シェアエコノミー」そのものです。

 

 この本を読みながら、わたしがこれまでに知り合った、外国から来た人たちのことをいろいろと思い出しました。週末になると大勢で集まって歌ったりおしゃべりしたりすることが楽しみだという、日本人と結婚したフィリピン女性たち。韓国からやってきて、日本に住んで30年以上経つという友人は、たまに帰省したときに電車の中でしゃべる人たちの声が大きくて「ああ、ここは韓国だ」と思うようになったとか。

 パキスタン人の中古車業者に会ったこともあります。新潟に営業所があって、以前はロシア向けが多かったのだけど、今はアジア向けがほとんどだそうです。

 

 小川さんも書いていましたけど、日本人の同胞意識はここまでないなぁと思います。どうしようもない人であっても無視はしないという考え方は、今の日本人には欠落していると思います。「自己責任」という切り捨て方が、今の日本に蔓延っていて、タンザニア人たちのような「ゆるい」感覚がうらやましく思えてくるのです。

3531冊目(今年135冊目)

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