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『青い壺』 有吉佐和子 25-119-3515

Aoitubo

青い壺

有吉佐和子(ありよし さわこ)

文春文庫

 京都で青磁の制作をしていた省造は、普段はデパートで頼まれた注文品を焼いていました。ある時、自分でもびっくりするくらいに見事な青磁の壺を焼き上げたのでした。これをどうしようかと思っているうちに、デパートの担当者が勝手に売りに出してしまったのです。

 青い壺はデパートで贈答品として買われ、そこから何人もの人たちの所を渡り歩いていくのです。壺に花を生けようとするけれど、壺に圧倒されてしまう人もいれば、せっかく貰ったのに箱を開けることすらしなかった人もいました。

 13話の登場人物たちの会話は、とても人間臭い話ばかりです。定年退職してから、家でぼぅっとしているだけの夫にイライラする妻。嫁に行った先の遺産相続の話に嫌気がさす嫁。女学校の同窓会での病気自慢。戦時中の食糧難の中でのホッとする話。ミッションスクールのシスターの苦悩。高級老人病院の患者のボヤキと、それを聞きながら働く掃除婦の幸せ。

 

 昭和52年(1977年)に出版されたこの本、それから50年近く経つというのに家族関係やら、定年後の男性の身の振り方やら、今もちっとも変っていない気がします。どの話にも「そういうの、あるある」と思うことばかりです。

 原田ひ香さんが「こんな小説を書くのが私の夢です。」と激推ししたことから再びベストセラーとなったこの本、わたしはNHKの100分de名著「有吉佐和子スペシャル」で、この本のことを知ったのですが、実に面白い!

 女性の眼から見た日本は、今もこの通りですよと、声を大きくして叫びたいです。

 

第一話 青磁ひとすじに制作を続ける陶芸家の省造。ある日デパートの注文品とともに焼きあがったその壺は見る者を魅了した。
第二話 定年後、家でぼんやりする夫を持てあました妻は、世話になった副社長へのお礼にデパートで青い壺を買い、夫に持たせた。
第三話 副社長である夫の部下の女性と、甥っ子を見合いさせるため二人を自宅に呼んだ芳江は、今どきの人たちに呆然とする。
第四話 青い壺に美しく花を生けようと奮闘する芳江。孫を連れた娘の雅子が急に帰ってきて、婚家の醜い遺産争いを愚痴るのだが。
第五話 老いて目が見えなくなった母親を東京の狭いマンションに引き取った千代子。思いがけず心弾む生活だったが……。
第六話 夫婦ふたりで、戦後の焼け跡から始めたこぢんまりとしたバア。医師の石田は、「御礼」と書いた細長い荷物を置いて帰った。
第七話 息子の忘れ物としてバアのマダムが届けてくれた壺をみて、老婦人は、戦時中に外務官僚だった亡き夫との思い出がよみがえり、饒舌に語りだす。
第八話 長女が嫁ぎ、長男はアメリカに留学。姑が他界したある日、夫にレストランに誘われ……
第九話 女学校の卒業から半世紀、弓香は同級生たちと久しぶりに京都で集まる。戦争を経て子育ても終えた彼女たちは、家庭の状況も経済状態もそれぞれで。
第十話 母校だったミッションスクールの初等科に栄養士として就職した、弓香の孫娘の悠子。野菜を食べさせたいと工夫を凝らすが、ある日……。
第十一話 世話になったシスターが45年ぶりにスペインに帰郷するときいた悠子は、青磁の壺をプレゼントする。壺はついに、海をわたる!
第十二話 スペイン旅行中に急性肺炎になったという入院患者の男は、病室に飾った青い壺に触られそうになると、怒鳴るのだった。
第十三話高名な美術評論家を訪ねた陶芸家の省造。スペインで見つけた「12世紀初頭」の掘り出しものとして、青い壺を見せられたが……。

3515冊目(今年119冊目)

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