『平等について、いま話したいこと』 マイケル・サンデル,トマ・ピケティ 25-170-3566
アメリカでは民主党、イギリスでは労働党、フランスでは社会党 ーー かつては労働者階級の有権者がおもな支持基盤でしたが、いまは高学歴・高経歴の専門職階級と価値観、利益、見解を同じくするようになった政党です。怒りの反発があったのも当然です。P70 サンデル
世界中の民主主義国では、市民の大多数が大学の学位を取得していません。アメリカで四年制大学を卒業しているのは約38%ですから、大卒ではない人がおよそ3分の2を占めています。イギリスでは約70%が大卒でない人たちです。なのに、大卒でない人が議会に占める割合はどうでしょう?ごくわずかです。5%から10%程度でしかありません。結果として、欧米民主主義国の議会には労働者階級の議員がほとんどいないということになっています。これでほんとうに代議制と言えるでしょうか?われわれはそれをただ受け入れ、あまり議論もしていません。もし女性議員の割合がそこまでアンバランスだったら、アメリカ連邦議会でもフランス国民議会でも、あるいはほかのヨーロッパの民主主義国の議会でも議論になっているでしょう。われわれはそうやって大きく前進し、女性議員を増やしてきたのです。ではなぜ、大卒でない議員がほとんどいないことは簡単に受け入れ、議論もしていないのでしょうか。P81 サンデル
エリートに対する反発の大きな原因は ーー これはトランプへの投票に現れていますし、ヨーロッパでも似たような人物への投票が見られますが ーー 労働者や大卒でない人たちの多くが、エリートに見下されている、自分たちの仕事の価値をないがしろにされている、という感覚を抱いていることです。P91 サンデル
かつて労働者たちに支持されていた政治家たちは、「学び、高学歴を得ることで力をつかむ」ということをスローガンにしてきました。それが間違った方向へ人々を向かわせてしまったとサンデル氏は指摘しています。すべての人が大学へ行くわけではないし、全人口から見れば、高学歴の人は少数です。なのに、その少数の人たちが社会を動かしています。
エリートが勝手に作り上げた社会のせいで我々は虐げられているのだと考える層に、トランプは支持されたのです。彼なら我々の想いをわかってくれると信じてしまったのです。だからエリートたちがいくら「トランプは危険だ」と言っても聞く耳を持ちません。よく考えてみれば、トランプも高学歴なのに。
仕事でも政治でも、高学歴の人が上に立つということを、わたしたちは刷り込まれていたのだというサンデル氏の発言に、今までそういう発想がなかったということに、わたしは愕然としました。
高学歴の人とそうでない人の人口比で議員が選ばれていないという「不平等」があったんだ!
そして、サンデル氏が欧米では当前だと言っている、男女間の不平等を無くす努力が、日本では為されていないということも。
不平等だと感じる人の気持ちは、不平等を生んでいる人にはわかりません。だからこそ、両方の人が話し合うことが大事であり、それこそが民主主義なのです。でも、それを怠ってきたからこそ、おかしな社会になってしまったのです。
不平等がいかに個人を卑屈にし、経済を非効率にし、社会を荒廃させるのか? このまま放っておいたら、この世はあっという間にディストピアになってしまいます。それで、いいのですか?
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