『すぐ役に立つものはすぐ役に立たなくなる』 荒俣宏 25-158-3554
荒俣先生は面白い方です。いつも、他人が気付かないことを見つける天才です。この本に書かれていることも、世の中のメインストリームではないところに興味を持ったとか、興味はなかったけれどやる羽目になったという話ばかりです。
「セレンディップの三人の王子」から生まれたセレンディピティの話、ヴォルテールの「ザディグ」、バタフライ効果、それまで全く関係なかったはずのことに何らかの関連性を見出すという文章を読んでいて、わたしの頭に浮かんだのは「ユーレカ」でした。これはアルキメデスが浮力の法則を思い付いた時に発したという言葉(ギリシャ語で「我、発見せり」)です。昨日見ていたTV番組で、星野源が新曲 「Eureka」の話をしていて、これと結びついたのです。
ノーベルがニトログリセリンを持ち運べるダイナマイトを発明し、工事などで便利に使われるようになったと同時に、爆薬などにも応用されてしまって苦悩したというのは有名な話ですが、ニトログリセリンが心臓の薬にもなるという発見も偶然から生まれたのです。それまで考えもしなかったことを、何かの拍子で発見するというのは、実に面白いです。
「知らない」ことは最大の贅沢だ。
わたしたちは、いつの間にか固定概念にがんじがらめにされています。これが当たり前、ずっとこうしてきた、そういうことだらけの世界から逃れるには、「知らないこと」を見つけるのが最初の一歩です。世の中って、知らないことだらけだもの。
わからないならすぐ調べればいいんだけど、その暇がなかったり、面倒くさかったりしたときにはどうすればいいのか? に対して荒俣先生は「わからなかったという記憶を残す」という方法を教えてくれました。いつか同じことに引っかかった時、「そうだ、知りたいと思ってたんだ」って気づけます。その頃には別の知識や経験が増えていて、とんでもない方法を思い付くかもしれません。
最近は、失敗を恐れる人が増えているらしいのですが、それってもったいない話ですよね。だって、失敗したからこそ、これ以外の方法を試してみようって気づけるわけでしょ。エジソンが言ったように、「私は失敗したことはない。上手くいかないやり方を1万通り見つけただけだ。」って思えばいいんだもの。それに、たいていのことは1万回やらなくても上手くいくはずだし。
何にでも答えがあると考えること自体が間違いじゃないかって思うことがあります。恋愛だって、料理だって、楽器の演奏とか、絵を描くとか、文章を書くとかだって、これが正解とか、これで完璧なんてありません。いつでも「もうちょっと先」を目指していられたら、それこそが幸せなのだって思います。
そして、荒俣先生のように「すべてが勉強」と思えたら、最高ですね。
3554冊目(今年158冊目)
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