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『遠い山なみの光』 カズオ・イシグロ 25-151-3547

Tooiyamanamino

遠い山なみの光
A pale view of hills

カズオ・イシグロ

小野寺健(おのでら けん)訳

ハヤカワepi文庫

『女たちの遠い夏』改題

 主人公の悦子は今は英国に住んでいます。長女の景子が自殺してしまって、その原因の一つは、自分が彼女を英国に連れてきてしまったことかもしれないと思ってます。父親が違う娘のニキは、景子の死についてそんなに責任を感じる必要はないとは言ってくれるけれど、それ以外の部分は、何かトゲトゲしい感じがしています。

 死んでしまった敬子がまだお腹にいた頃、悦子は長崎に住んでいました。そこで知り合った佐和子には万里子という娘がいました。娘のことを余り構うことがない佐和子ですけど、この子のためにも誰かいい男を捕まえてアメリカへ行きたいと思っていたのです。

 戦後、日本が復興し始めた時期の話の中で、男たちは女のことをさほど大事に思っていない感じが伝わってきます。一緒に食事をしていても、話をしていても、家族というよりも使用人のような空気を感じます。悦子の夫の父親が「洗濯機なんかなくても二本の腕があるのだから」なんていう所で、そういうのって自分でその仕事をしない人の発言だなって感じました。今でも、それと同じようなことを言う人はいますけど。

 佐和子の娘の万里子は、とにかく大人の言うことを聞きません。質問してもすぐに答えてこないし、何か言えば反論ばかりと大人たちは感じています。でも、彼女の話をよく聞いていると、万里子は思ったことをそのまま言っていて、それを大人が受け止めてくれないだけです。子どもだから親や大人の言うとおりにするのが当たり前という扱いに真理子は辟易しているのだと感じました。

 結局どの人も、本当の意味での会話をしていません。その空虚な関係の中で景子は死を選んだのかな。

 

 この作品が映画化されたということで、この作品を読んでみたのですが、世代ごとの価値観の差は、どうにも埋められない壁のようです。これを現代の若い人たちはどう受け止めるのでしょうか。

3547冊目(今年151冊目)

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