『悪女について』 有吉佐和子 25-153-3549
この作品は1978年に「週刊朝日」で連載され、1978年4月6日から9月28日までテレビ朝日で連続ドラマとして放映されていました。わたしはこのドラマを見ていたのですが、原作は読んでいなくて、今回初めて読んでみました。
この本の単行本が出版されたのが1978年9月、文庫は5年後の1983年に出版されています。ここまで調べてみて「あれっ?」と思いました。書籍の発売よりもドラマ放映の方が先だったのです。小説内に「週刊朝日」「テレビ朝日」という言葉が出ているあたり、メディアミックスで売ろうという作戦があったのではないでしょうか。
女性実業家の富小路公子が、自社ビルのバルコニーから転落して死亡しました。それが自殺か他殺かはわかりません。そんな彼女の謎を、記者が27人の人にインタビューすることで明らかにしようとするのですが、聞けば聞くほど、どれが本当の彼女なのだか分からなくなっていくのです。
八百屋の娘だった鈴木君子が実業家として成功し富小路公子になったのですが、彼女のことを「親切で思いやりのある人」という人もいれば、「金の亡者」とか「男を手玉に取るのが得意な女」という人もいます。それぞれが関わった時代や、立場によって、彼女に対する感情が全く違う所が面白いのです。
「自分は養女で、本当の親の顔は知らないの」と幼馴染に話していたかと思えば、中学を出てからは昼間は働き、夜学でコツコツと簿記を勉強するという堅実さもあります。そして、誰もが口を揃えて言うのは「すごい美人ではないけれど、惹きつけられる魅力のある美しい人」だということです。
公子(君子)には誇大妄想癖があったのかもしれないし、多重人格だったのかもしれないけれど、「人たらし」であったことだけは間違いありません。
美しいものが好きで、頭が良くて、人を惹きつける力がある公子を「悪女」と呼ぶ人もいるけれど、悪口を言う人たちこそ「悪いヤツ」なのじゃないかしら? 最後に登場した次男の話が一番真理をついていたような気がします。
それにしても面白い作品でした。昔々に見たあのドラマをもう一度見てみたいなぁ。
3549冊目(今年153冊目)
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