『筒井康隆、自作を語る』 筒井康隆、日下三蔵 25-205-3601
日下さんが筒井さんにインタビューしているのですが、その会話がとにかく面白いんです。自分の作品について、それを書いたキッカケとか、アイデアについて筒井さんは、実によく覚えています。「自分は書きなぐるタイプじゃないから」と言ってますけど、あれだけ多作なのによく覚えてるなぁ。どの雑誌に連載されたとか、原稿を渡したのになかなか読んでもらえなかったとかはよく覚えてるのに、それがどこから出版されたかは意外と覚えてなくて、そこは日下さんがフォローしています。
なぜそうなるかというと、今だったら、例えば文藝春秋で連載したら、単行本化するのは文藝春秋ですよね。ところが筒井さんが登場したころは、必ずしもそうじゃなかったというんです。雑誌連載はしたけど、本として出版するのはねぇっていう出版社が結構あって、別の出版社に頼むという、不思議な状況があったそうです。
今だと○○新人賞というようなものがたくさんありますけど、筒井さんが小説を書き始めた頃はそんなものはなくて、どうやったら自分の作品を知ってもらえるのか?と考えた末に「NULL」という同人誌を作りました。それが江戸川乱歩の目に留まり、彼が編集を行っていた「宝石」に作品を掲載してもらえるようになったのです。自分とジャンルは違っていても、これは面白いと思ったらすぐに声を掛けた江戸川乱歩はエライ!
筒井:『コメットさん』なんかも日常的なSFでしたね。あれは俺の『家族八景』の盗作だ、と怒ったんだけど(笑)
日下:いや、コメットさんの方が二年ほど早いです(笑)
~中略~
日下:大元は『メリー・ポピンズ』なんです。あれが推理小説だと松本清張で『家政婦は見た!』になるし、SFだと筒井さんの「家族八景』に。
コメットさんはSFだったとは、気づいてなかった(笑)。小松左京の『日本沈没』のパロディ『日本以外全部沈没』は星新一から「このタイトルで書かんか」と言われて書いたのだそうです。面白いネタを見つけることが小説を書くキッカケなのだと、この本の中でも何度も語られています。
売れっ子だった筒井さんは締め切りに追われ、胃にポリープができたりしながらも頑張って書き続けてきました。でも、そういう悲壮感を外に見せずに、どちらかと言えば、言いたいことを言う人というイメージでやってきたのは、さすが筒井さんという気がします。
読み返したい本が何冊も見つかりました。まずは「農協月へ行く」かな。
3601冊目(今年205冊目)
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