『文庫旅館で待つ本は』 名取佐和子 25-232-3628
海の近くにある小さな旅館「凧屋」は、戦前から続く老舗旅館です。近頃は女将の体調が悪く、代わりに若女将の丹家円(たんげ・まどか)さんがここを仕切っています。この旅館には「海老澤文庫」という古書のスペースがあって、その蔵書の中からお客様にぴったりな一冊を円さんがおすすめしてくれます。
でも、円さん自身は特別な嗅覚を持っていて、本の臭いのせいで本を読むことができません。ですから、おすすめした本を読んだ方からその本のあらすじや感想を話してもらうのが楽しみなのです。
ここにやってくる人たちは、それぞれに胸の中に秘めていることがあって、それを自覚していることもあるし、気づかずにいることもあります。円さんにすすめられた本を読んだ後、「あっ、そうだったんだ」と気がつき、納得したり、オロオロしたり、でも、それによって次の一歩が踏み出せるようになっていくのです。
一冊目『むすめごころ』川端康成
二冊目『春は馬車に乗って』横光利一
三冊目『小僧の神様』志賀直哉
四冊目『藪の中』芥川龍之介
五冊目『こころ』夏目漱石
自分が自分であることを押し殺して生きて来た妻の話と、誰にも見えない何かが見える少年の話が印象に残りました。そして、最後の話に登場した「海老澤文庫」の秘密には、驚かされてしまいました。
3628冊目(今年232冊目)
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