『ままならぬ顔・もどかしい身体』 山口真美 25-238-3634
山口さんは、人間と「顔と身体」との付き合い方についての研究をされている方です。顔についての考察、そして、ご自身の体験としてのジェンダーギャップについても、この本の中でいろいろと書かれています。
他人から見て自分はどう見えているのか?その中でも表情というのは大きなファクターです。笑っていても目だけ笑っていない人だったり、謝罪の言葉を述べたり、頭を下げたりしていても、「あっ、この人の本心ではないな」なんてことが伝わってくる人が、最近増えています。
それと同時に、相手が何らかの権威(学歴、家柄、職業など)を持っているということに騙されてしまったり、自分の都合のいいことを言う人だけを信じてしまったりする人が増えています。だからこそ、おかしな政治家とか、宗教家などに騙されてしまうのかもしれません。コロナ禍以降、他人を見る目を養う体験が不足しているのかな? そもそも、そういうことを考えない・感じない人が多いということなのかな?
2009年に行なわれた、小学二年生を対象とした調査では、男子が好きな色は圧倒的に金色で、女子は水色でした。P107
女子が好きなのが水色というのは自分もそれくらいの歳だったころと同じだなと思いましたが、男子が好きな色が金色というのにはビックリしました。金メダルを目指すのも、お金持ちになってキンキラキンの家に住みたがるのも、こう言うところが根っこにあるのでしょうか?
かつては、男は青か黒、女は赤という決めつけがありましたけど、子どもに関しては、最近はかなり自由になりました。でも、変な校則がまだ存在していたリ、大人の世界では、男性はダークスーツ、女性はスカートにパンプスという決めつけがまだまだはびこっています。
こういう決めつけが消えるのにはいったいどれだけの時間が必要なのでしょうか。
日本の就職活動では、当たり前のように履歴書に顔写真を貼り付けます。~中略~ 書類通過率を誇る写真館や、特定の業種に強い写真館もあるほどです。対する欧米では、採用に当たって写真を求めることを禁ずる国も多いです。顔写真からは人種や性別や年齢が一目瞭然なので、見た目による就職差別をなくすためです。P89
これも男性優位の単一民族という日本だからこその慣習だったのです。とりあえず書類選考を突破するために、見た目のいい写真を貼らなくっちゃというのが学生の常識になってしまっています。
ルッキズム(見た目第一主義)によって、心を傷つけられたり、差別されたりしていいはずがありません。でも、人間はやってしまうのです。あの人はデブだとか、あの人は外人だとか、あの人は男だか女だかわからないとか。そんな、どっちでもいいことを気にして、そんなどうでもいいことを発言して、他人を傷つけてしまうのです。そして巡り巡って、自分自身も傷つけてしまうのです。
世の中の多くの人は、自分はそんなことには当てはまらないと思っているかもしれません。でも、そうはいかないのです。いつ病気になるか、いつ怪我をするかわかりません。そして、誰でも必ず老います。
これまで他人をルッキズムで痛めつけてきた人には、それがそのまま自分に返ってきます。白髪やシワやシミが増えてきて慌てふためくのです。若い奴らはとグチを言いたくなるのです。たくさん薬を飲まなければならないとボヤくのです。
すべての人が、あるがままに生きることを認めれば、世の中のイヤなことは半減します。そうしたら、自分自身のイヤなことも減ります。それこそが、心の平和だと思うのです。でも、それでは困る人たちが、いろんなことを言ってきます。「やっぱり、美人の方がトクじゃない」なんてね。
そういう悪魔のささやきが聴こえてきても、「あっしには関わりのないことでござんす」って言い続けたいと、わたしは思うのです
3634冊目(今年238冊目)
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