『墓じまいラプソディ』 垣谷美雨 25-238-3634
この物語は、先日亡くなった母が「お父さんと同じ墓に入りたくない。樹木葬にして欲しい。」という遺言を長女に残したところから始まります。長女は、母の気持ちはすごくよくわかるけど、父にどうやってこの話を切り出していいのかわからずに悩み、兄と弟との三者会談をすることにしたのです。
そこでまず引っかかったのは、母親がどうしてそういうことを言い出したのかを、兄と弟はちっともわかっていないということでした。田舎の本家の嫁がどれだけ息苦しい生活をしていたのかを、今初めて知ったという所に愕然とします。
それと同時並行して起きていた問題が、娘の結婚問題です。これまでは、フェミニストな男性だなと思っていたのに、結婚したらどちらの姓を名乗るのかについての話をすると、自分は長男だからと言うだけで、全く話にならないのです。
日本の婚姻では、男女どちらかの姓を選ぶことができますが、そのほとんどが男性側の姓です。それによって女性にどれだけ負担をかけているのかを理解してくれない男性優先の社会。面倒くさいことは全部妻にやらせて平然としている夫という現実。そういうことが絡み合って、物語が進んでいきます。
いかにも垣谷さんが選びそうなテーマで、世の中の変化についていけない男たちがオロオロする様が描かれているのですけど、それは、女たちの怒りに気付かずにきたことのツケなのかなと感じます。
家のお墓があって、跡継ぎがいたとしても遠隔地でなかなかお墓のお世話をできないので、近くにお墓を引越しさせたいと思っても、お寺から高額の費用を請求されたり、首都圏ではお墓の価格も高騰していて、屋内型のマンションスタイルのお墓でもないと手が出ないという現実もあります。
そして、何よりの問題は跡継ぎがいないということです。「墓じまい」というのは多くの人にとって切実な問題ですけど、お年寄りの家族や親戚に反対されて、なかなか実施に踏み切れないという問題もあります。
日本の伝統だから、なんて言葉に騙されがちですけど、武士や一部の豊かな農家などを除いたら、家のお墓の歴史なんてたかが100年なんですよね。かつては土葬だったから、石の墓標など作らなかったとか、関東と関西で骨壺の大きさが全然違うとか、これまで知らなかったことが色々とわかって、勉強になりました。
墓じまいを通じて、日本の家族制度のことも考え直さなくっちゃということが良くわかってくる物語でした。とにかく「そうそう、あるある」と思うことばかりです。
3634冊目(今年238冊目)
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