『ロ・ギワンに会った』 チョ・ヘジン 25-223-3619
北朝鮮から中国を経て、ベルギーのブリュッセルにたどり着いたギワンは、ここに来ようと望んできたわけではない。そもそも、ヨーロッパにどんな国があるかも知らず、地図だって見たことがない。脱北のブローカーが言った言葉に従ってきただけだ。ベルギーの人たちが話しているフランス語はおろか、英語だってわからない。アルファベットをゆっくりと書くのがやっとだった。
この国の韓国大使館へ行って難民申請すればいいのだとブローカーに教わっていた。でも、なかなか行くことができない。そこへ行けば何とかなるかもしれないと思っても、足がすくんでしまう。やっとの思いで辿り着いた大使館で、彼は門前払いを食らった。
それからギワンは道端で生きる人になってしまった。凍えるような夜に寝るためには、とにかく屋根のあるところを見つけるしかない。幸いだったのは、行き倒れてしまった彼を見つけてくれた人がいたこと。連れていかれた先は孤児院だった。もう20歳になっていたギワンは、小柄で痩せていて、ベルギーの人からは子どもにしか見えなかったらしい。
放送作家のキムは、そんなギワンの日記を読んで彼の足跡を追ってみたくなり、ブリュッセルへやって来た。彼が最初に泊まったホステルや町の中を、彼の影を追いかけるように歩き回った。彼に会ったことがある人に面会もした。そして、ギワンのことを思う。
大柄な白人たちの中にいるたった一人の小柄な異邦人、パスポートもなく、身寄りもなく、言葉も分からず、ギワンはどんなに心細かっただろう? 寒さと飢えで、このまま異国の地で野垂れ死ぬしかないと思ったこともあるだろう。
でも、ギワンは死ぬわけにはいかなかった。本当は母と来るはずだった自由な世界で、生きていくしかない。
この本の三分の二くらいまでは、とてもつらい気持ちでいました。そして寒いヨーロッパの景色を想像しました。晩秋のミラノで見た、犬と一緒に寝袋で寝ていた男性の姿を思い出しました。
でも、最後の方は希望が湧いてきました。ギワンに人間らしい感情が戻ってきたからです。貧しくとも、不法滞在者であっても、どこかで働いて生きて行けるなら、それで充分に幸せだと思えたのです。
3619冊目(今年223冊目)
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