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『ゾマーさんのこと』 パトリック・ジュースキント、ジャン=ジャック・サンペ 25-218-3614

Zomasan

ゾマーさんのこと
Die Geschichte von Herrn Sommer

パトリック・ジュースキント
Patrick Süskind

ジャン=ジャック・サンペ
Jean Jacques Sempé 絵

池内紀(いけうち おさむ)訳

文藝春秋

ドイツ 1991

「毎日読みます」で紹介されていた本

 ゾマーさんはいつも歩いていた。朝、ぼくが学校へ行く7時半ころでも、昼間でも、夜でも、休みの日でも、雨でも、雪でも、ゾマーさんはとにかく1日中歩いていた。

その姿はすぐにわかった。遠くからでも直ちにわかる。冬のあいだは裾の長い、やけに大きな、奇妙にこわばった黒いオーバーを着ている。足にはゴム長靴、禿げ頭には毛糸の帽子をのせている。夏場は黒いリボンのついた平べったい麦藁帽子をかぶっていた。亜麻製でキャラメル色をした夏服にキャラメル色の半ズボン。半ズボンの下から細長い脛がニューと出ている。腱と静脈瘤だけの枯れ枝のような足だった。それが不格好な登山靴をはいている。

 町中の人がゾマーさんが歩き続けていることを知っていました。そして、今日はどこで見かけたという話をしています。この田舎町では彼は人気者なのかもしれません。でも、彼がなぜ歩き続けているのかは、誰もわかりません。

 ゾマーさんの奥さんは人形作家で、家で仕事をしています。買い物をして料理も作るし、郵便局へも行きます。こちらは至って普通の人らしいのです。

 ゾマーさんはクラウストロフォビア(部屋にじっとしていられない)という病気じゃないかという人がいます。でも、それはあくまでも想像の範囲です。

 

 話は淡々と進んでいくのですが、挿絵がとにかく素晴らしいのです。ゾマーさんは長い杖を突きながらいつも大股で歩いています。語り手の少年が木に登ったり、自転車に乗っている時も、遠くでゾマーさんが歩いている姿が見えています。ゾマーさんが歩いているのは、もう空気のような、鳥が鳴いているような、自然な感じなのです。

 ゾマーさんは何のために歩いていたのでしょうね? それはゾマーさんにしかわからないこと。それとも、ゾマーさんにもわからないことだったのかもしれません。

 「毎日読みます」で知ったこの本は、とても面白い本でした。

3614冊目(今年218冊目)

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