『誓願』 マーガレット・アトウッド 25-256-3652
誓願は「侍女の物語」から15年後の話です。「侍女の物語」は侍女の視点で書かれましたが、こちらではリディア小母、司令官の娘アグネス、カナダに住む高校生デイジーの3人の視点で物語が進行していきます。
リディア小母と言えば、「侍女の物語」では女性指導者のトップとして恐れられる人でしたが、ここでは彼女の全く違う面が見えてきます。彼女がどのようにして、この立場に立つようになったのかが語られ、本当の彼女の人となりが見えてくるのです。
一見恵まれているように見えているアグネスですが、彼女の実の母は亡くなっており、継母から余計者扱いされている彼女のいら立ちと、でもギレアデという国に対して持つ従順な気持ちの間で揺れています。
そして、ギレアデの隣国のカナダでのびのびと育ったデイジーは、自分の生い立ちの秘密から、怒涛の運命に飛び込むことになります。
ギレアデは理想的な国家であるということになっていますが、現実には食糧難もあるし、身分の差もあって、国民の心の中には黒いものが溢れています。あの人ばかり優遇されているという嫉妬心や猜疑心、医師や司令官という身分を利用してセクハラをしたり、殺人を犯す人もいます。
もちろん、こんな国から逃れようとする人がいます。そんな人たちを助ける「地下鉄道」がバーモント州やメイン州にあって、カナダへ逃げようとする人がいます。見つかったら間違いなく殺されます。でも、どんな危険を冒しても、ここにとどまるよりマシと思う人がいるのです。
ギレアデから真珠女子(パールガールズ)という女性たちが、布教活動をカナダで行っているあたり、よっぽど人口減少が酷いのでしょうが、外の世界を見ても羨ましいと思わないメンタルを構築してしまったギレアデという国の薄気味悪さを感じます。
アメリカが変貌してギレアデになってしまったわけですが、これが想像の世界ではなく、現実の世界になりつつあるところが実に怖いです。国家の為といいながら、実は特定の人たちの利権のために国のあり方が変わってしまうなど、あってはならないことです。でも、そうなりつつある国、もうそうなってしまっている国が、世界のあちらこちらにあります。
それがいかに恐ろしいかを知るためにも、この本を読んでくれる人が増えることを期待しています。
3652冊目(今年256冊目)
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