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『体育がきらい』 坂本拓弥 25-251-3647

Taiikugakirai

体育がきらい

坂本拓弥(さかもと たくや)

ちくまプリマー新書437

 「体育がきらい」というタイトルにとても惹かれました。なぜなら、わたしには「体育がきらい」という友人も、「体育が好き」という友だちもいたからです。中学時代のあるクラスメートは、「自分は体育しか取り柄がないから、これがなくては困る」と言っていたし、高校時代のクラスメートは、運動する人を見るのは好きだけど、「自分は体育に向いていない」という理由で体育の授業はすべて見学していました。

 体育がきらいになる理由として、「運動が得意ではないので、上手くできないところを見られて笑われたくない」とか、そもそも「体育の先生が怖そうできらい」だとか、「体操着を着て太腿が露わになるのがイヤ」だとか、いろんな理由がありますが、そのほとんどが、心理的に追い詰められるからイヤだということなのです。

 

 自分のことを振り返ってみると、わたしは運動神経が良い方じゃないし、走れば遅い、体育きらいになりそうな要素はあるのに、そう思ったことはないのです。上手く泳げるわけじゃないけどプールは楽しみだったし、ボールを投げるのは不得意だったけど、よけるのは上手かったのでドッジボールも好きだったし、鉄棒や跳び箱は苦手だったけど、全然ダメって事じゃなかったんです。

 なぜ平気だったのかと考えてみて、あることに気づきました。「下手だから笑われる」ということがなかったのです。下手だから仲間に入れないと言われたこともありません。小学校のわたしのクラスには病気で運動ができない子もいたし、理由はよくわからないけど走れない子もいました。いろんな子がいるというのが当たり前だったので、それがよかったのかもしれません。

 運動が得意ではないのに、中学ではバレーボール部に入りました。自分がどれだけできるのかなんてことは全然考えてなかったからこそ入部できたのだと思います。3年間やってみてわかったのは、自分はバレーボールには向いていないということでした。でも、3年間毎日走っていたおかげで持久力がついたのです。これは大きな進歩でした。

 大人になってからウォーキングや、エアロビクスや、ダンスなどをするようになって、わたしには持久力という才能があると気がつけて嬉しかったです。

 

 高校のブラスバンド部の後輩で、松葉杖をついて歩く子がいました。片足の指を事故でなくしてしまったので走ることができません。だから体育はいつも見学なんだけど、水泳の授業だけは参加できるので、とっても嬉しいんだと話していました。

 これは半世紀も前の話なんだけど、こういう子に対する体育は、今はどうなってるのかなぁ? 

 

 アメリカのハイスクールで体育(ソフトボール)の授業を見学したことがあるのですが、これは衝撃的でした。まず着替えをしません。普段の服装でそのままやっちゃいます。スカートから短パンに履き替えた子はいたけど、運動用の服じゃありません。やりたくない子はグラウンドの端で喋ってます。先生はそれに対して何も言いません。「アメリカは自由だ!」と思いましたね。

 

 日本の教育に体育が加わったのは「富国強兵」の考え方からです。戦後も、その精神論だけが残ってしまっているのは何故なのでしょう? 技術を向上させたいから辛い練習をすることと、監督や先輩が威張り散らすことは全く関係ないのに!

 「体育がきらい」なのは、本人の問題ではないのです。教えている側の古い体質の問題です。

 「体育はきらい」で構いません。でも、そう思っている人たちに、「身体を動かすことは楽しい」と気づいて欲しいのです。それが、この本が言いたかったことなのだと思います。

3647冊目(今年251冊目)

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