『ルポ超高級老人ホーム』 甚野博則 25-263-3659
高齢者が増え続ける日本、老人ホームや特別養護老人ホームが至るところで増えています。一般庶民の感覚だとできるだけ安価でというのが第一条件ですが、この本で取材しているのは、まだ介護の必要がない老人(65歳以上)で、入居時の一時金が数千万円から数億円という高額所得者を対象とした高級老人ホームです。
仕事をリタイアして入居する人もいれば、仕事は続けていて、これまでの住まいもあるけれど、別荘的に老人ホームを使うという人もいます。温泉が出るようなリゾート地にある施設もあれば、交通の便がいい都会にある施設もあります。
食事は豊富なメニューの中から選べ、掃除もクリーニングなどの有料サービスがあり、デパートなどへの送迎があったり、ホーム内でのリクリエーションが充実していたり、家族を呼んで食事会を開けるようなスペースがあるなど、高級であることを前面に押し出して集客をしているのですが、そのすべてが本当だとは限りません。
ホームで働いていた人の話や、かつて入居していたけれど今は別の施設へ引越した人の話などから、施設側に問題があるのではないかと目星をつけて取材へ行っている所もありました。
実際に施設見学をしようとすると、電話で予約を入れた時点から怪しいところもあります。見学予約がいっぱいでと言われていたのに、実際に行ってみると、見学者はおろか入居者すら歩いていない施設だったり、レストランなのに食べ物の臭いがしなかったり、頼んでもいないのに勝手に見積書を出してきたり、なおかつ、その見積書をくれなかったり。
高級老人ホームで暮らす人たちにインタビューしてみると、そこに妙なヒエラルキー意識があって、「嫌な感じ」を体感することもありました。
食事がまずいとか、レクリエーション参加を強制されるとか、運営側の身勝手さが横行しているところもありました。
もちろん、ちゃんとした高級老人ホームもありますけど、そういう所はわずかだなと感じました。そして、ホームで働く人たちの待遇が余りにもよくないところが、とても気になりました。仕事内容が多岐にわたり過ぎるし、賃金が低いので、辞めていく人が多いのです。
高級をうたうならば、従業員にもそれなりの待遇が必要です。お金さえあれば何を言っていいという態度の居住者に、こき使われているという気持ちを持たせてはいけないはずなのですが、そこをわかっていない経営者が多いようです。
高級であろうと、なかろうと、老人ホームにはありがちな問題がいろいろと語られているこの本から、様々なことを知りました。もし老人ホームを探すことがあるなら、ぜひこの本を読んでみてください。チェックポイントがたくさん見つかるはずです。
3659冊目(今年263冊目)
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