『SISTER“FOOT”EMPATHY』 ブレイディみかこ 25-243-3639
FA(イングランドサッカー協会)は1921年に女子チームへのグラウンドの貸し出しを禁止し、事実上の女子サッカー禁止令を出す。その理由は、サッカーは女性には向かないスポーツだというものだった。
実際に、女性がサッカーをすることを快く思わない人々もいた。しかし、それよりも、FAは女子サッカーの成功に危険を感じたのだろう。
この禁止令は1971年まで解除されず、半世紀近くも続くことになる。P66
サッカー王国のサッカー協会が女子サッカーの人気に嫉妬して、こんなことをしていたなんて情けない。女王陛下の国の人たちなのに、了見の狭さにビックリしてしまう。これと同じようなことが様々な競技や、様々な社会活動でも「女性には向かない」という言葉が言われ続けてきた。でも、それが一方的な押し付けだったことが証明され続けている。
他者への想像力(エンパシー)とは寛容さの上に成立するものであり、何の乱れもない清潔な靴しか履かない態度を純粋と呼ぶなら、純粋はすなわち不寛容の言い換えになる。
「これが正しい」「これが伝統だ」「そんなこと誰もやったことがない」「下品だ」。女性が何かを始めようとすると必ず言われてきたNOという言葉、それは単なる既得権を守るための戯言でした。それをひっくり返すために、女性たちは連帯して戦ってきたのです。
みかこさんが今注目しているのは、ネットで遠くの人ともつながれるということよりも、近くにいる人たちとの連帯です。ひとりでは心細くてできなかったことも、何人か集まればできるということに気づき始めたのです。
例えば、歴史に女性の名前はごくわずかしか登場しません。それは歴史を書いてきたのは男性だからです。身近な辞書としてみんなが使っているウィキペディアだって、男性が書いている項目がとても多いということに気づき、何人かの女性たちが女性に関する項目についてウィキペディアに投稿しているという話に、「こういうことも草の根運動なのだ」と気づかされました。
自分が知っていることが世の中のすべてだと思っている人が、本当に多いのです。そういう人にエンパシーを発揮させるためには、これまで表立っていなかったことを見せていく必要があるのです。
自分の常識がいかに歪んでいるのか、この国の常識は他の国では非常識であるとか、そういうことを一人でも多くの人に知らせていくこと。それが大事なんだと、強く強く感じる本でした。
3639冊目(今年243冊目)
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