『本と歩く人』 カルステン・ヘン 25-252-3648
カールは、町の老舗書店「市壁門堂」の老書店員で、客から頼まれた本を配達するのが日課です。癖の強い客に、⾧靴下夫人、朗読者、ファウスト博士などとニックネームを付けたり、次はどんな本を紹介しようかと、楽しみながら仕事をしています。
カールに突然声を掛けて来た少女がいました。「名前はシャシャ、9歳なの」と言い、いくら追い払おうとしてもカールについてくるのです。
シャシャは、どんなことでも遠慮なく言ってしまいます。客の機嫌を損なうじゃないかとカールはドキドキしてしまうようなこともします。でも、そんなところが意外と客に気に入られているようで、カールは自分にはない何かが彼女にあるんだなと気がつき始めます。
書店のオーナーの老人が亡くなって、店を継いだ娘に「あなたは解雇します」と言われた時、カールはどんなに悲しかったでしょうね。別に給料をもらえなくてもいいから、この仕事を続けたいという彼の気持ちは伝わらないままでした。
いいかい、すべての人に気に入られる本なんてないのだよ。
カールがシャシャに言ったことの言葉は、本と人との相性だけでなく、人と人との相性も言い表しているのだと感じました。この世に絶対なんてことはないんだと。
ケガをしたのをきっかけに引きこもってしまったカールを、シャシャが表に連れ出したところで、「ああ、よかった」と、思わず涙がこぼれてしまいました。だって、彼女がいなかったら、カールはあのまま死んでしまったかもしれないのですから。
本を読者の手に届けることが生き甲斐だったカール、それを一番理解していたシャシャ、カールがやってくるのを毎日待っていた客たち。なんてステキなつながりなのでしょう。そんな毎日が、これからもずっと続きますように。
※「訳者あとがき」に書かれていた、ドイツ語版「森崎書店の日々」の推薦文をカルステン・ヘン氏が書いていたというのには驚きました。
3648冊目(今年252冊目)
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