『絵本戦争』 堂本かおる 25-257-3653
非営利団体「ペン・アメリカ」によると2023-2024学校年度に、前学校年度の2.7倍にあたる4231種類の本が禁書指定された。
黒人、LGBTQ、アジア系、アメリカ先住民...マイノリティを描いた絵本がなぜ禁書されてしまうのか。
アメリカは合衆国なので、州単位で法律が違います。禁書に関しても州単位、あるいは市単位で設定されています。この本で取り上げられている禁書は、トランプ支持派が多い地区で設定されているものがほとんどですが、ハッキリ言って「どこに問題があるの?」と言いたいものばかりです。
奴隷としてアメリカへ連れてこられた人たちの歴史、アメリカの先住民族がどのように虐げられてきたかという歴史、移民問題、LGBTQ、人種問題、第二次世界大戦中の日本人収容所の話もあります。
スペイン語と英語など、複数の言語が併記されているからという理由で禁書になっているものもあります。それのどこが悪いというのでしょうか?
フロリダ州知事デサンティスは2022年に州内のキンダー(5歳児幼稚園)から小学3年生に性的思考と性自認に関する授業や話し合いを禁じる法律、通称「ゲイと言うな法(Don't say Gay)」に署名した。この法律の正式名称は「教育における親の権利法」だが、フロリダ州内に限らず全米のリベラル派から大きな反発を買い、「ゲイと言うな」という通称が定着した。~中略~ この法に伴いLGBTQ関連の書籍は高校生対象のヤングアダルト小説から園児対象の絵本に至るまで大量に禁書とされ、図書室や教室から消えた。さらにこの法により、生徒同士や教師が自分の性自認について話し合うことも禁じられた。
禁書するだけでなく、話をすることまで禁止にするというとんでもない法律を作り上げた人物が、次期大統領の座を狙っていると思うと、現在のトランプ政権がやっていることが、もっと酷いことになっていくと想像されて、本当に恐ろしい。そして、二度目の南北戦争が起きるのではないかという危惧が、かなり現実味を帯びてしまっているのかもしれません。
ところで、この法律ですが、教育関係者や保護者だけでなく誰でも禁書の申請してよいことにしてしまったために、とんでもない数の申請があり、役所が対応しきれなくなってしまったそうです。反対の声も多く、2024年に法律が改正され、授業では扱わないが、個人的に話すことは構わないということになったそうです。
アメリカは、禁書という禁じ手によって、どんな国を目指しているのでしょうか? こんな国にはもういられないと、国外脱出する人が増えたら、ますます空洞化が進むだけだと思うのですが。
3653冊目(今年257冊目)
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