『コマネチのために』 チョ・ナムジュ 25-270-3666
マニはソウルの貧しい地域であるS洞に両親と三人で暮らしています。父は飲食店を経営しているけれど大した稼ぎはなく、母親は主婦。一人娘のマニは未婚の36歳、ずっと真面目に会社員をしてきて、気がついたら一家の大黒柱になってしまっていました。
貧しい地域に生まれ、育ち、そこで学んだことは「貧乏は遺伝する」だという、どうしていいのかわからないような状況なのです。就職は出来ても女性は出世できず、結婚か出産を機に退職するのが当たり前。がんばって36歳まで働いても出世するどころか、突然クビ!
実家暮らしだから、いきなり路頭に迷うわけじゃないけれど、未来はちっとも明るくないんです。
マニは子どもの頃にテレビでコマネチを見て魅了されてしまい、自分も体操選手になりたいと思っていたけれど、身近に体操を教えてくれる人もいない環境でした。自分の夢を母親に訴えると、体操を習える私立小学校を探してきて、そこに通えるようにしてくれたのですが、そこに通う子たちとの実力差があり過ぎて、挫折してしまったのでした。
コマネチを夢見て頑張っていた子ども時代の話と、現実しかない今の話が、交互に登場するのですが、世の中は理不尽なことばかりであることに変わりはありません。辛い話が続くのに、深刻にならずに済んでいるのは、どのエピソードもどことなくマヌケだからなのでしょうか。
マニが母親に体操をやりたいと訴えていたシーンで、わたしは自分が小学3年生だった頃のことを思い出していました。わたしはバレエを習いたいなぁと思っていたのですが、そんな習い事をしている友だちもいなかったし、親には何も言わずに諦めていました。
大人になってから、隣のクラスの子が小学生の時からバレエを習っていたという話を聞いて驚きました。わたしも「やりたい」と言えていたら、やらせてもらえたのかもしれなかったのです。だから、親に必死に「やりたい、やりたい」といい続けたマニは偉いなぁって思ったんです。やってみて諦めたのと、やらずに諦めるのでは全然違いますから。
特別な夢もなく、時々訳が分からなくなる母親に振り回され、父親の稼ぎは相変わらず大したことなく、それでも生き続けているマニは、何を頼りに生きていくのかなぁ。何か楽しいことを見つけられればいいのだけれど。
3666冊目(今年270冊目)
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