『わたしたちが光の速さで進めないなら』 キム・チョヨプ 25-287-3683
この短編集は確かにSFなのだけど、どうしようもなく人間の話なのです。
亡くなってから急に母親のことを何も知らなかったと気がついたり(館内紛失)、「あかちゃんのことば」がわかるようになっても(共生伝説)、そこから新しい疑問や問題が生まれてきて、ジワジワと「人間って何なんだろう?」という想いが迫ってきます。
「ユウウツ」「ゾウオ」といったネガティブな気持ちを、わざわざ手にしたいと思う人がいる(感情の物性)のは、「トキメキ」のようなポジティブな気持ちよりも、自分らしいと考える人が多いからなのかなぁ。これが、その気持ちを増幅させる「麻薬」なのだとすると、この商品が現実化できたら、きっと売れるのでしょうね。
表題作の「わたしたちが光の速さで進めないなら」には、とにかく圧倒されてしまいました。誰が何と言おうと「わたしには自分が向かうべき場所がよくわかっているよ」というアンナのキッパリとした言葉が、とても清々しいのです。
この7篇が収められています。
・巡礼者たちはなぜ帰らない
成年式で旅だった若者たちは1年後に返って来る。しかし、全員が帰ってくるわけではない。
・スペクトラム
祖母は異星人と暮らしていたことがあるらしい。
・共生仮説
あかちゃんのときにしか分からないことがあるとしたら。
・わたしたちが光の速さで進めないなら
アンナは家族の下へ旅立った。
・感情の物性
「感情の物性」という商品が流行っているが、わたしにはその理由がわからない。
・館内紛失
図書館は故人の記録と触れ合う場所になっていた。
・わたしのスペースヒーローについて
わたしはおばさんに憧れて宇宙飛行士になろうと決断したのに。
これが、この著者のデビュー作なのだそうです。他の作品も読まなくっちゃ!
3683冊目(今年287冊目)
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