『知ってるつもり:無知の科学』 スティーブン・スローマン、フィリップ・ファーンバック 25-303-3699
知ってるつもり:無知の科学
The knowledge illusion
スティーブン・スローマン
Steven Sloman
フィリップ・ファーンバック
Philip Fernbach
土方奈美(ひじかた なみ)訳
ハヤカワ文庫 NF578
2025年 早川書房創立80周年記念フェア『ハヤカワ文庫の80冊』
あなたも、自転車に乗ったり見たりしたことがありますよね。では、この黒い自転車のどこにチェーンとペダルがついているのかを赤で書き加えて下さい。という問題が出されました。この本の表紙に描かれているのは、ある人の回答です。これが変だという事は、もちろんお判りでしょうけど、では、あなたは正確な位置にペダルを書けますか?
実際に自転車を見てみればどうってことないのに、それをちゃんと覚えているかというと、あれ~? となってしまうのです。
自分はわかっていると思っていても、そうじゃなかったという事がたくさんというか、ほとんどなんです。たとえば、毎日絶対に使っている水洗トイレ、水だけで汚物が流れ、しかも臭わない、その構造を説明できますか?
そんなことスマホで調べればわかるじゃんって、答える人もいるでしょうけど、そもそもスマホ検索って、なぜできるのかを説明できますか?理屈なんかわからなくても使えればいいじゃん。って思ってるあなた、スマホの答えが絶対に合っているって保証はあるのかしら?
世の中に様々な新しいものが生まれ、古いものは役に立たないと思われた時代がありました。原子力は未来を明るくすると夢見たこともあったし。第二次世界大戦に懲りて、もう戦争は起きないだろうと予言した人もいました。教師とは人間力の高い人がなる職業だと信じる人が多い時代もありました。でも、そうじゃなかった!
知ってるつもりだったのに、自分って何にもわかってないんだな、世の中の人たちもみんなそうなんだよなって思うと、いろんなことに気づけます。何故トランプが地球温暖化などウソだと言い切れるのかとか、間違っている人にその点を指摘すると嫌がられるとか、原因は一つなんです。
みんな、「知ってるつもり」で生きてるってことなんです。
文明が発達するにしたがって、生活に必要なことはドンドン分業化されてきました。理屈はわからなくても使えるものが次第に増えてきたのです。そして「何でもわかってる」気になってしまったのです。
洗濯機ができたから、手で洗濯できない人が増えたし、自動車が発達したから歩かない人が増えたのと同じです。難しい理屈や便利なアイデアが見えないところで働いているのに、それに気付かずに生きているわたしたち。
「解説」で語られていた、強盗が自動車を盗んだのに、その車がマニュアル車だったので運転して逃げられなかったという話に、ちょっと嬉しくなりつつも、「自分がそれを知らないということを知らない」って怖いよねと思うのでした。。
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