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『生きるとか死ぬとか父親とか』 ジェーン・スー 25-278-3674

Ikirutoka

生きるとか死ぬとか父親とか

ジェーン・スー

新潮文庫

 「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」と「介護未満の父に起きたこと」を読んで、この2冊の間のことも知りたいと思い、この本を開いたのですが、スーさんとお父さんの関係が、前の二冊以上に、生々しく迫ってきました。

 お父さんは、新しいものに鼻が効くのだけれど、いつもちょっとズレていて、最初は上手くいっているようだけど、結局会社を潰してしまうという人です。人に騙されることもあるし、借金というものをよく理解していないところもあるので、お金持ちになったり、急に借金まみれになってしまったりするジェットコースター人生なのですが、本人はそれをわかっているのだか、単に逃げているのか、余り深刻に考えていないみたいなのです。

 母亡き今、それを何とかしなければならないのは娘のスーさんです。お父さんは自分が言いたいことしか言わず、都合が悪いことはギリギリになるまで言いません。その〆切ギリギリ状態で相談される娘としては、「いい加減にしてくれ」「自分で何とかして」と言いたいところですけど、それを言っても、彼には伝わらないということが少しずつわかってくるところが、実に面白い!

 

 引越しをする時だって、荷物整理など何もせずテレビをずっと見ているし、引越し先だけは自分で見つけてきたけれど、どう考えても予算が足りないとか、人によっては親子の縁を切るくらいのダメさ加減ですけど、「お父さんのことを文章にしてお金にする」と宣言したスーさんはエライ! そして、「いいよ」といったお父さんって、スゴイんだかテキトーなのかよくわかりません。

 お母さんが生きていてくれたら、お父さんがここまで暴走しなかったのにと思うこともあれば、お母さんがいなくなったからこそ、自分はお父さんのことを少しは知ることができるようになったと思うこともあります。

 めんどくさいお父さんだなぁと思いつつも、彼と自分が似ているということは良くわかっています。だからこそ一緒に住まないことを選んだスーさんは賢明です。

 しょうもないようでいて、人たらし能力が抜群だということが幸いして、何とかひとり暮らしをしているお父さん。これだけ文章を書くネタを生み出してくれているのだから、「まぁ、しょうがないか」とスーさんは思っているのかなぁ。

 「生きるとか死ぬとか父親とか」、実に見事なタイトルだと思います。だって、人生ってそんなことの繰り返しなんだもの。

3674冊目(今年278冊目)

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