ブログ内検索


  • ダメでもいいからやれ。
    体験もしないでお前ら、
    すぐに「ダメだ」って言うのは、
    学校で聞いただけの話だろう。
    やってみもせんで何を言っとるか
    (by 本田宗一郎)

読書Love!

  • 本が好き!
  • NetGalleyJP
    プロフェッショナルな読者
    グッドレビュアー 100作品のレビュー 80%

« 『雪女 夏の日の夢』 ラフカディオ・ハーン 25-279-3675 | トップページ | 『ぼくは刑事です』 小野寺史宜 25-281-3677 »

『樹木たちの知られざる生活』 ペーター・ヴォールレーベン 25-280-3676

Jumokutatino

樹木たちの知られざる生活
Das geheime Leben der Bäume

森林管理官が聴いた森の声

ペーター・ヴォールレーベン
Peter Wohlleben

長谷川圭(はせがわ けい)訳

ハヤカワ文庫NF

ドイツ 2015

ハヤカワ文庫の80冊

 森の中で根を張っている樹木たちが、会話をしていると言ったら、そんなのファンタジーの世界じゃないかと思う人がほとんどじゃないでしょうか。でも、実際に樹木たちは根や根の先に絡んでいる菌糸によってネットワークを作っているのです。森の中では多くの木が存在することで自分たちの生活環境を守っています。ある程度密集していることによって湿度や気温が保たれます。強い風などに耐えるためにも集団でいることが大事なのです。

 若い木や日陰になっている木に栄養や水を与えたり、冬になる前に水分量を調整しておきなさいと指導したりもしているというのにはビックリしました。樹木たちは会話し、助け合って生きているなんて、これまで想像したこともありませんでした。

 更に、離れたところにいる仲間に連絡をする方法もあります。例えば、キリンに葉を食べられているアカシアの木がいます。この木はキリンを追い払うために葉の中に有毒物質を集めます。それに気づいたキリンは、近くの木ではなく、離れた場所のアカシアの所へ移動します。それは、最初の被害者のアカシアが、災害が近づいていることを仲間に知らせるために警報ガス(エチレン)を発散しているからなのです。その警報を知ったアカシアも葉の有毒物質を増やします。ですからキリンは、遠くにいるとか、風上とか、その警報が伝わっていない木のところまで移動しなければならないのです。

 

 広葉樹は秋になったら葉を落とすことで身を守っています。強い風を受けても大きな葉がなければ、風が吹き抜けやすくなります。落ちた葉は発酵して腐葉土となり、栄養分になるだけでなく、発酵時に熱を発するので、木にとって一番怖い凍結防止にもなります。

 樹木は根で吸収した栄養を水分と一緒にして、てっぺんまで運んでいます。全身に水道管が走っているようなものです。元気な木なら良いのですが、ケガをしている木の場合、その水道管が凍結すると破裂することがあります。それが原因で折れてしまったり、死んでしまう木もあるのだそうです。

 

 そして、最後の方に書かれていた、仲間がいない樹木は可哀想だという話に、考えさせられてしまいました。森の中でなら、先輩たちの力を借りていろいろと学習しながら大きくなれるのに、公園などに1本だけ植樹された木は、誰とも会話せず、たったひとりで大きくならなければなりません。自然の中で育った子たちよりも生育が悪いというのは、とっても切ない話だなぁ。

 樹木の寿命って、わたしは100年とか200年位と思っていたのですが、それは都会などに植樹されたものの場合だったのです。森の中には1000年以上生きている樹木も沢山いるのだそうです。自然に暮らしていればそんなに長生きできるのだという事も初めて知りました。

 

 樹木たちの生活はとても豊かなのに、その邪魔ばっかりしている人間の愚かさをヒシヒシと感じる本でした。人間がいなくなったら、彼らは今よりもずっとノビノビと生きていけるのでしょうね。

3676冊目(今年280冊目)

« 『雪女 夏の日の夢』 ラフカディオ・ハーン 25-279-3675 | トップページ | 『ぼくは刑事です』 小野寺史宜 25-281-3677 »

海外 その他」カテゴリの記事

伝記・日記・ノンフィクション」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 『雪女 夏の日の夢』 ラフカディオ・ハーン 25-279-3675 | トップページ | 『ぼくは刑事です』 小野寺史宜 25-281-3677 »