『差別はたいてい悪意のない人がする』 キム・ジヘ 25-299-3695
「私は差別をしない」という思い込みを問い直す
この本の著者は韓国の方です。日本へやってきた時に、韓国人であるがゆえの差別を感じました。その象徴的なものが「韓国人」という呼称です。彼女はそれを聞き、電車内などではできるだけ韓国語を話さないようにしたり、気を使ったそうです。そして、自国へ帰り、友達と話をしていて気がついたのです。黒人や中国人に対して、自分たちも差別的な言葉を使っているのだと。
同じ人間なのに、ある時は差別する側になり、別の時には差別される側になるということを、意識している人はどれだけいるのでしょうか。
差別は、無意識のうちにしているものなのです。「外国人だから」「女だから」「障害者だから」「LGBTQ+だから」、誰にだってそういう気持ちが内在しているのです。他人事としてなら許容できるのものであっても、自分や自分の家族に関わってくると急に差別をし始める人だっています。
不平等な社会が息苦しい理由は、構造的な問題を、個人の努力で解決するように不当に誘いかけているからだ。不平等という社会的不正義に対する責任を、差別を受ける個人に負わせる。そのため個人の人生は不安になる。病気になったり、失敗したり、いかなる理由であれ、マイノリティの一に置かれないよう、たえず注意を払わなければならない。思いがけずマイノリティの位置に置かれた時には、事実を否定し、苦しみを耐え忍ぶために多くの時間を費やせねばならない。
差別は、他人に向かうだけではありません。実は自分に向かっても差別の意識は働いてしまいます。
先日見たニュースで、91歳の母親に「殺してくれ」といわれて、殺人を犯してしまった息子の話が放映されました。
この母親は歳を重ね、身体が思うように動かなくなりました。普通なら介護サービスを受けられる立場です。でも、彼女はそれを受け入れなかったのです。自分の身体状態のせいで差別されるのは嫌だと考えたのです。息子がずっと介護を続けました。けれども、彼一人の力ではどうにもならない状況になってしまいました。それでも、母親は考えを変えませんでした。この状況を理解した裁判所は、執行猶予が付いた判決を下しましたが、犯罪者となってしまった彼の人生は、どうなるのでしょうか。
実際には韓国籍を持っていても、外国の方との混血などで、見た目が外国人のようであるというだけで差別されるという話がありました。これは日本でも全く同じです。様々な人が一緒に暮らす国であるということを、いまだに理解できないままの人が余りにも多いのです。
見た目はもちろん、様々な違いがある人間が暮らすこの世界で、差別や思い込みによって不幸が沢山生まれてしまうのです。
積極的な行動はとれなくても構いません。「私は差別をしない」という思い込み が自分の中にあるということ、それだけは忘れないで欲しいのです。
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