『理想の彼女だったなら』 メレディス・ルッソ 25-273-3669
トランスジェンダーを正しく理解するのは、なかなか難しいことだと思います。生まれた時の性と自分が思う性が一致しない人というのは、世界人口の0.3~0.5%、つまり200人に1人いると言われています。でも、そんなにいるとは思えないと感じている人が多いと思います。それは何故なのか? この本を読みながら考えていました。
特に、男性として生まれたけれど心は女性という子の場合、まずは親の抵抗を受けます。男なのになぜピンクの服を着たがるのか?とか、どうしてスカートを履きたがるのか?とか、スポーツよりもお人形遊びが好きなのはダメだとか。
母親は比較的許容してくれますけど、父親は男の子に向かって「男らしさ」を求めた発言をしがちです。時には殴ってでもいう事を聞かせようとすることもあります。その結果、父親に対する拒否感が大きくなってしまうということを無視して、こういう態度を取るのは、彼ら自身が「男らしさ」に縛られているからなのでしょうか。
アンドリューは性適合手術を受けてアマンダになりました。住む場所も変えて、女性として生きていくことにしました。最初は、自分がどう見られてているのかが不安で、ドキドキしながら新しい高校へ行ったのですが、あっという間に友達もできました。彼女を好きだという男の子も現れました。
でも自分の正体を話したら、みんなが離れて行ってしまうのではないかという恐怖がいつもあるのです。それほど、彼女の過去はつらいものだったということです。自分だけでなく母親の精神状態も不安定になってしまったし、両親が離婚してしまったのも自分のせいだと思っています。
仲良しとの女子トークは弾むけど、女子として暮らし始めたばかりの彼女にとって、分からないことがたくさんあります。例えば、「体育の授業の時にスポーツブラをしないと、後で胸が痛くなるよ」と友達に言われたところなど、なるほどねぇと思いました。能町みね子さんの「オカマだけどOLやってます。」の中で語られていた、「体験したことがない話題に困った」ことを思い出しました。こういうことを話せる友達ができるまでは大変だよね。
アマンダのように完全に女性になりたい人もいるし、外見は変えないけれど心は女性という人もいるし、女性から男性になりたい人もいるし、どちらでもないという人もいます。そういう人を指さして「変な奴だ」と言う人の多さは何なのでしょうね? 他人の人生をとやかく言う権利など誰にもないはずです。
この物語の中にも登場しましたけど、宗教の悪影響も大きいなと思います。「性別は男と女だけ」なんて発言をしているバカな政治家がいますが、キリストはそんなことを言ってはいません。本当は心の支えになるはずの神が、自分を認めてくれないと思わせてしまうことの愚かさをわからないんだろうなぁ。そのために自死する人が大勢いるというのに。
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