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『サーキット・スイッチャー』 安野貴博 25-317-3713

Circuitswitcer

サーキット・スイッチャー

安野貴博(あんの たかひろ)

ハヤカワ文庫JA

第9回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞(2021年)

2025年 早川書房創立80周年記念フェア『ハヤカワ文庫の80冊』

 完全自動運転車がかなり普及し、タクシーやトラックなどはもちろん、戸別配達用の自動運転の小型車が町の中で走り回る2029年の日本が舞台です。この技術によって社会は大きく変わりました。高齢者ドライバーの問題や、トラックドライバー不足などは解消されてきましたが、これまでドライバーとして働いてきた人たちの職が奪わるという問題が発生しています。

 この自動運転システムのアルゴリズムの開発会社の社長、坂本が自分の自動運転車で外出しようとしたところを、何者かに襲われ、車ごと誘拐されてしまったのです。首都高を走りながら、犯人は犯行声明をネットで配信し、首都高の封鎖を要求しました。もし、要求に応じなければ2人が乗った車を爆破すると宣言したのです。

 

 自動運転車で犯人はライブ中継をしています。坂本に対して、自動運転について様々な質問を続けます。そして、最終的に投げかけた質問は「トロッコ問題」でした。自動運転中にどちらを助けるか?という分岐を作るときに、2人対1人なら2人を助ける方を選択するというような、どちらかを犠牲にする選択をするが、もし1対1の場合だったら、そこに何らかのファクターは含まれるのだろうか? だったのです。

 走り続ける自動車の中での会話が実にスリリングです。それと対照的に、この事件を追いかける警察のローテクさが目立ちます。この事件を解決しようというよりも、犯人を捕まえられなかった時の責任問題を先に考えている警察上層部に妙に腹が立ちます。

 

 この物語の舞台となっているのは2029年ですが、現実にここで語られているようなシステムが稼働するのは、もう少し先であるような気がします。この本の中で語られていた自動運転システムのことを現実の世界に落とし込んで考えてみると、町の中が自動運転車だらけになってしまって、人間が歩く場所が残るのか?という気がしてしょうがないのです。
 
 この作品を書いた安野氏は、現在参議院議員となり、「テクノロジーで政治を変える」と語っていますが、どうなんでしょうね?

3713冊目(今年317冊目)

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