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『物価を考える』 渡辺努 25-327-3723

Bukkawokangaeru

物価を考える

デフレの謎、インフレの謎

渡辺努(わたなべ つとむ)

日経BP 日本経済新聞出版

オトラジ#286

30年前は「高いニッポン」だった!

主要企業は1980年代のバブル経済の時期に賃金の大盤振る舞いを行ったので、人件費が大きく膨らんでいました。そこへもってきて、1995年には超円高が置き、ドル建てで見た日本の賃金水準が世界で最高になってしまったのです。経営者たちは、この賃金水準ではとても中国と戦えない、賃金を抑えるべきと提案したのです。~中略~
財界が賃金を押さえたいと言っても、労組が簡単に従うはずがありません。そこには何らかの説得がなければいけません。~中略~
企業が正社員の雇用を守る代わりに、労組は今後、賃上げを要求しないという暗黙の約束を交わした可能性はあります。
P121

アベノミクス時代には女性とシニアによる労働供給の増加は賃金を引き下げる方向に作用しました。そうしたなかで展開された官製春闘では、労組もそれほど強いの賃上げを要求できず、賃上げの妥結額も、アベノミクス前の水準を多少上回る程度にとどまりました。P129

 2023年以降、労働人口の低下もあり、賃上げが叫ばれるようになりましたが、それができるのは大手の企業だけです。

 

 この30年間、日本では物価が上がらないのだから賃金も上がらなくていいという理屈がまかり通っていました。

 日本以外では給与は上がるし、モノの値段も上がっています。石油や食品など輸入しなければ生きていけない日本なのです。おのずと日本の物価は上がります。下手に値上げをしようとすると企業がバッシングを受けるという空気もありました。そっと実質的値上げをするために商品の価格は変えずに内容量やサイズを減らす「ステルス値上げ」で凌いできた企業もありました。でも、もう限界です。

 バブルの頃には円高でした。ですから日本人はどんどん海外旅行へ行き、企業も海外物件を買い漁りロックフェラービルまで手にしていました。そんな景気の良さを、政府や財界は快く思っていなかったというのは何故なのでしょうか。

 たぶん自動車などの輸出立国である日本にとって、円高より円安の方が輸出産業にとって良いという判断をしたのでしょう。でも、生活の基盤を輸入に頼っている日本ですから、円安になれば輸入品は高くなり、物価上昇につながります。輸出で稼いでいる会社がその分を補助してくれるわけでもないのに、どうしてこんなロジックを放っておいたのでしょうか。

 ゼロ金利政策だって、本当はあんなに長く続く予定ではなかったはずです。金利を下げることで景気が良くなるというストーリーが成立しなくなったけれど、どのタイミングで上げればいいのか決められず、結局は日銀総裁が変わるまでゼロのままだったというのは、余りに情けない。そんな人に勲章をやってしまう日本って、もう終わっている気がします。

 

 物価が上がり、でも所得は増えず、経済的に困窮する人が増えています。それに対してどんな対策を打てばいいのか? 経済オンチの日本政府に何ができるのか? どこかの国のように破産するしかないのか? この本を読んでみても、結論は出ませんでした。

3727冊目(今年323冊目)

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