『版元番外地 <共和国>樹立篇』 下平尾直 25-322-3718
これまでに何冊か、小さな出版社に関する本を読んできました。この本も、そういう感じの本かと思っていたわたしは、この本にとても驚かされました。もちろん、「株式会社共和国」という出版社を作った経緯も書かれていますが、それよりも下平尾さん自身の本との関わり合い、出版社を作るまでの彼の生き様が圧倒的な迫力で書かれていたのです。
そもそもこのあたりは紡績や織物などのいわゆる「いとへん(糸偏)」産業によって発展した。大阪市にいたっては、日清戦争後に「東洋のマンチェスター」と呼ばれるほどに隆盛し、1920年代には面積、人口、工業出荷額で東京を抜いて”大大阪”と称されたこともよく知られている。(朝鮮人女工のうた 1930年・岸和田紡績争議 金賛汀)
この地で学生時代を過ごした下平尾氏は、紡績工場で安い賃金で働かされていた朝鮮出身の女工さんたちのこと、彼女たちが起こした労働争議のことなどを、後に知ることになったという文章を読んでビックリしました。「東洋のマンチェスター」と呼ばれていたという事は、工業都市として当時の大阪は繁栄し、労働者が必要だったという事ですよね。そこで、朝鮮半島から大勢の人がやってきて、ここで働いていたのです。
そういえば子どもの頃に、「マンチェスター&リバプール煙だらけの街よ~」という曲が流行っていたなぁという記憶があります。当時の大阪も煙だらけの街だったのでしょうか。
突発性難聴になった時に感じた「他人はわかってくれない」という疎外感、「下平尾 しもひらお」という苗字の面倒くささ、お酒を飲み過ぎて駅の階段を転落して救急車で病院に運ばれたことなど、著者の妙に濃い人間性が実に面白いです。大変だとわかっているけれど出版の仕事が好きで、文学が好きで、ムチャばかりしているけれど、どこか愛されキャラな下平尾さん、共和国をずっと続けて下さい。あなたのような方が、日本の出版界には必要なのです。
3722冊目(今年318冊目)
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