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『青い眼がほしい』 トニ・モリスン 25-311-3707

Aoimegahosii

青い眼がほしい
The Bluest Eye

トニ・モリスン
Toni Morrison

大社淑子(おおこそ よしこ)

ハヤカワepi文庫 6

米国 1970

2025年 早川書房創立80周年記念フェア『ハヤカワ文庫の80冊』

 黒人の少女ピコーラは「青い眼がほしい」と神に願いました。

 この物語の冒頭で、「ディックとジェーン」の文章が登場します。これは1950〜60年代、アメリカの小学校で広く使われていた、読み方の初級教材の文章です。そこには、白い壁に緑の屋根の家、お父さんとお母さんがいて、子どもたちとしあわせに暮らしています。という白人家庭の話です。黒人の子どもたちも同じ教科書で勉強します。そして、教科書に書かれた世界が理想的なものだと信じ込まされてしまいます。

 ピコーラが青い眼にこだわったのは、そのせいなのです。でも、そんな夢が叶うわけがありません。貧しく、醜く、夢すらもない生き方しかないのは、白人が、自分たちの事しか考えていなかったからなのに。

 

 この本の中でも語られていましたが、黒人は、髪の毛が縮れていることすら認められなかったのです。白人がいるところで働くためには、髪の毛をストレートに矯正するか、ヘアアイロンをかけるか、短く刈ってしまうしかありませんでした。

 60年代後半ころからブラックパワーという運動と共にアフロヘアが目立つようになったのは、それに対する反発でした。

 

 これまで読んできた公民権運動の事や、人種差別に関する本では、暴力のことが大きく扱われていました。でも、この本の中で、暴力は目立ちません。でも、読んでいる間中いやな気分が続きました。白人が黒人に対して、白人の正義だけを、白人の価値観だけを押し付けていたという事に苛立ったのです。「白人だけが美しくて、それ以外は醜い」という刷り込みは、どんな暴力よりも酷いことだとわかったのです。

 1970年に発表されたこの作品は、後にノーベル賞作家となったトニ・モリスンのデビュー作です。この時代に、こういうことを言えた人がいたということに驚き、打ちのめされました。

3707冊目(今年311冊目)

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