『私たちに名刺がないだけで仕事してこなかったわけじゃない』 京郷新聞ジェンダー企画班 25-341-3737
結婚後に家事を担当する主婦のことを、韓国では「家の人」と呼んでいた。韓国国立国語院と女性政策研究院が、この言葉を差別用語として指定したのは2008年。だが、今でも多くの男性が自分の配偶者を「家の人」と紹介する。家事が法的労働として認められたのは2021年5月。1953年に勤労基準法が制定されてから68年が経ってようやく、家事労働者が法的な地位を認められたのだ。P68
日本の「家内」と韓国の「家の人」と同じ感覚なのだと思うのだけど、日本ではこれが差別用語だと真剣に論じられたことはありません。そして家事労働が法的な地位を持ったこともありません。この文章にガーンと頭を殴られたような気がしました。
スンジャさんは時々、店に来ていた客たちの会食のシーンが頭に浮かぶ。席に座っている女性たちは、大変そうだった。「男性は家に帰って自分の体だけ洗えばいいけれど、女性たちは家に帰ってからまた家事をやらなくちゃいけないから・・・」とう考えが頭をよぎる。P124
そう、家に帰ってから男が風呂に入っている間に着替えを用意して、男が脱いだ服を洗濯機の横に片付けて、自分が入った後は風呂掃除をして、明日の朝の弁当の用意をして、朝出すごみをまとめて、そんなことを毎日女がやってるなんて、男は考えもしない。
家族を養うために働くのは男性、家事一切と育児をするのが女性という考え方が、韓国ではずっと当り前でした。50年位前まで、男の子は進学することが普通でしたが、女の子は小学校しか行かせないのが普通でした。男の兄弟の学費を稼ぐために姉や妹が子供のころから働くのも普通の事でした。
結婚して子供が生まれて、夫がちゃんと稼いでいてくれればまだいいのですが、稼ぎが悪かったり、働かなかったりする夫の代わりに必死に働く女性が多くいました。もちろん家事も、子育ても、親の介護もしながらです。妻がどんなに働いても、家の所有権も、会社の社長という身分も、すべて夫のもの。妻には自由に使える時間もお金もない。それが当たり前の事でした。(ああ、日本も同じでしたね)
学歴がない彼女たちの働き先は、エッセンシャルワーカーが多いのです。清掃、介護、良くても看護師。非正規雇用が多く、賃金も低いし、労働環境が劣悪。だから、若い層はこういった職業に尽きたがりません。だから今でもこういう職業についている高齢女性が大勢います。彼女たちがいなくなったら社会はまわらなくなるというのに、それに対する動きはないに等しい状態なのです。(これも、日本も同じです)
韓国大手新聞社「京郷新聞社」で特別に編成されたジェンダー企画班による、偉大すぎる女性たちの記録
激動の時代、国を影で支えてきたのは「正社員」には数えられない無数の女性たちだった――。
韓国社会を支えてきた50~70代の女性たちへのインタビュー集。
彼女たちへのインタビューを読んでいて、これは韓国だけではない、日本でだって同じだという想いで、息が苦しくなりました。今の時代は当時よりはマシになったと思いますが、まだまだなことがたくさんあります。インタビューに答えてくれた女性たちは『82年生まれ、キム・ジヨン』の母親世代です。母親の時代より自由な社会になったと信じたキム・ジヨンは、自由に生きようとして挫折しました。
「超少子化」が深刻な問題となっている韓国、その原因がどこにあるのかが、とてもよくわかるインタビュー集でした。
3737冊目(今年341冊目)
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