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『さよならジャバウォック』 伊坂幸太郎 25-336-3732

Sayonaraj

さよならジャバウォック

伊坂幸太郎(いさか こうたろう)

双葉社

 量子(りょうこ)の夫は、もともと自分勝手で威圧的な人間だったけど、今日の彼はとんでもなく興奮していて、量子に殴りかかってきた。身の危険を感じた彼女は、棚を吊ろうと思ってさっき道具箱から出したばかりの金槌を手にしていた。そして、夫を殺してしまった。

 どうしよう!とパニックになった量子。その時、玄関のチャイムがピンポンと鳴る。ドアの向うから声が聞こえた。「量子さん、問題が起きていますよね? 中に入れてください」。ドアを開けると大学時代のサークルの後輩、桂凍朗(かつらこごろう)がいた。

 というショッキングな出だしで始まるこの物語、量子はショックの余り、頭が回らなくなっていました。凍朗に「この死体を運び出しましょう」と言われ、フラフラとついて行ったのでした。

 

 伊坂さんの作品によく登場するのは、「明言を残す人」と「仲良しコンビ」です。主人公は何かの事件に巻き込まれてオロオロしていることが多いので、この人たちの会話が物語を進めていくことが多いのです。シリアスな場面なのにダジャレや、とんでもないウンチクを語っているところが、伊坂作品「らしさ」でもあり、そこに仕込まれた「ヒント」に、後で「そうだったんだ~」となる事が多いので、ただ笑ってるわけにはいきません。

 今回、名言を残す人は桂凍朗、人間を深く考察する人です。彼のテーマは人間の二面性です。味方や家族に対しては優しい人でも、敵や外国人に対してならとてつもないレベルでの残虐性を示します。その二面性のどちらが本性なのか? について彼は常に考えています。

「スポーツは、自分たちに埋め込まれた攻撃性をうまく発散させるために作った、ヒトの偉大な発明の一つ」

「真面目に、誠実にやろうとするのはいいけれど、それを他人にまで求めはじめると危ないってことだよ。正しいことをそこまで正しいと信じるのは」

 何だか今の時代をズバッと言われているようで、彼の発言はかなり怖いです。そして、量子にとって、彼は味方なのか、それとも?と思わせるところがあって、信頼しきれない気持ちが湧いてきます。

 そして、今回の「仲良しコンビ」は破魔矢と絵馬の夫婦。量子を助けてくれて、夫がなぜあんな暴れ方をしたのかを説明してくれたりするのだけれど、何故そんなことを知っているのか? どうして量子を助けてくれたのか? これまた謎です。

 

 ミステリーとSFが入り混じったこの作品のテーマは、量子が何度も口にしていた「違和感」なんだろうと思います。自分の記憶にあるあの人と、今目の前にいる人が同じ人だとは思うけど、でも何だか違う気がする。そう、そこが気持ち悪いんですよ。その違和感は、自分の勘違いなのか、頭が回っていないだけなのか、それとも? ってところですね。

 ところで、この作品は伊坂さんのデビュー25周年記念作品なんですが、「オーデュボンの祈り」から、そんなに経ったなんて、何だか信じられないなぁ。

3732冊目(今年336冊目)

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