『同志少女よ、敵を撃て』 逢坂冬馬 25-340-3736
セラフィマは、外交官になるのが夢でした。そのためにドイツ語を勉強していたし、もうすぐ大学へ進学する予定でした。でも、彼女が暮らしていた村に、突然ドイツ兵がやって来て皆殺しにされてしまったのです。呆然としていた彼女は、その後からやってきた赤軍に救われはしましたが、何もかも失っていました。
セラフィマは、猟師だった母から銃の使い方を習っていました。その腕を見込まれて、女性だけの狙撃手を養成する学校へ入ることになりました。家族も故郷も失った彼女には、もうそれしか生きる道は残っていなかったのです。
4年に満たないその戦いにより、ドイツは900万人、ソ連は2000万人以上の人命を失った。
第二次世界大戦で、ナチス・ドイツがソ連に攻め込んだということは知っていましたが、それがこんなにも悲惨な戦争だとは知りませんでした。
ドイツでもアメリカでも、戦地で戦うのは男性で、銃後を守るのが女性となっているが、ソ連では女性も兵士として戦うことになった。これこそが平等である。という養成学校の教官の言葉は、その時点ではセラフィマたちにとっては正論だと感じたのでしょう。でも、戦場へ出てみれば、どこへ行っても男ばかり、「援軍が来たと思ったら、お姉ちゃんかよ」とバカにされ、狙撃手としての実績を見せれば「お前らは女じゃない」と言われてしまうのは、余りに酷い、酷すぎる。
「戦争は女の顔をしていない」によれば、戦争が終わってからも、「あの女は兵士だった」と指をさされていたというのですから、本当に酷い。
だからこそ、最後のシーンで、セラフィマがスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチのインタビューを受けようとしていたのには、ハッとしました。彼女はきっと、「わたしが話さなかったら、わたしが戦場でしてきたことが、なかったことにされてしまう。」と思ったのでしょうね。
ウクライナがソヴィエト・ロシアにどんな扱いをされてきたか、知ってる?なんども飢饉に襲われたけれど、食料を奪われ続け、何百万人も死んだ。たった20年前の話よ。その結果ウクライナ民族主義が台頭すれば、今度はウクライナ語をロシア語に編入しようとする。ソ連にとってのウクライナってなに?略奪すべき土地よ (オリガ)
この言葉を読んで、この作品が発表されて間もなく、ロシアがウクライナ侵攻を始めたのは、そういう事だったのかと合点がいきました。ドイツに攻められて多くの人が亡くなったというのに、今度はロシアがウクライナへ攻め込んで多くの犠牲を出している。こういう負の連鎖はもういい加減にして欲しいのです。
3736冊目(今年340冊目)
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