『言葉のトランジット』 グレゴリー・ケズナジャット 26-20-3779
新年の抱負を立てることを毎年繰り返しているのに、五年前、十年前の目標を思い出してみても、ほとんど記憶に残っていない。それに対して、同じ期間にときどき訪れた失敗の経験は今でも鮮明に思い出すことができる。楽しい記憶ではないけれど、楽しい楽しくないという単純な軸だけで計りようのないものは確かにそこにある。新年の抱負を立てることよりも、ずっと人間らしいものだ。
グレゴリーさんは計画を立てることが大好きなんですって、毎日走ろうとか、いろいろ計画するんだけど、挫折することが結構あって。でもまた翌年になったら計画を立てるというところに、へぇって思っちゃいました。
「言葉の出島」という文章を読んで、クスクスっと笑ってしまいました。
グレゴリーさんが区役所へ行った時の事。彼の顔を見ただけで英語で話しかけてきます。英語の会話で用は済んで、最後に英語の薄っぺらな説明書をくれたので、「日本語の説明書ももらえますか」とお願いしたら、それはずっと厚くて、「読むのが大変かもしれません」と役所の人に言われたけど、ただ、ありがとうと受け取ったんですって。
グレゴリーさんを知ってる人なら、最初から日本語で話しかけるだろうけど、彼のことを知らない人は英語で話しかけてくるのよね。
もしかしたら英語はわからない外国人かもしれないのに。とりあえず英語って思い込みが日本人にはあるのよね。でも、これからは、顔だけで外人だとか、英語だとかって思っちゃいけない時代なんじゃないかしら。ここは日本だから、とりあえずは日本語のはずよね。それがダメそうなら次の言葉ってのが順序じゃないかと思うのだけど。
何でそんなことを思うのかっていうと、昔モントリオールへ行った時に、たとえばデパートで買い物をする時、まずはフランス語で聞いて来るの。そこで反応がないと「May I help you ?」って英語に切り替わる。レストランのメニューでも、地図でも、フランス語と英語が表記されていて、そういうやりかたもあるんだなと驚いたの。
この本はグレゴリーさんの初めてのエッセイなんだけど、これまでに発表されて来た小説と同じ世界だなって感じるところが多くて、面白いんです。あのお父さんが日本で観光する日が来るなんて、想像もしなかったもんなぁ。
3779冊目(今年20冊目)
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