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『ニッケル・ボーイズ』 コルソン・ホワイトヘッド 26-21-3780

Nickelboys

ニッケル・ボーイズ
Nickel Boys

コルソン・ホワイトヘッド
Colson Whitehead

藤井光(ふじい ひかる)訳

早川書房

米国 2019

 エルウッドは真面目な少年でした。家は貧しいけど、働いてお金を貯めて大学へ行きたいと願っていました。でも、その夢はあっけなく潰されてしまったのです。彼は無実の罪で捕まってしまったのです。自分は何もしていないと 言う事さえ許されませんでした。それは彼が黒人だったからです。1960年代公民権運動が盛んになって、アメリカのあちらこちらでデモが起きるようになっても、この町ではそんなことは関係ないのです。不良少年を矯正するための少年院ニッケル校へ入れられてしまったのです。

 少年たちが収容されている寮も、勉強するための教室も、完全に白人と黒人で分けられています。なのに、そこを行ったり来たりしている子がいたのです。彼はメキシコ生まれで、夏に日焼けして黒くなると黒人の方へ行けと言われ、冬になって白くなると白人の方へ行けと言われるのです。人種差別なんて、その程度のいい加減なことなんです。白人だろうが黒人だろうが、悪い奴といい奴がいる、それだけなのに。

 何かまずいことをしでかすと、といっても、どれだけ悪いことをしたかではなく、教官の気分次第で少年たちは折檻されます。エルウッドも大したことをした訳でもないのに、教官に叩かれ、気を失い、気がついたら病院にいたというくらい酷いことを平気でする人たちが、この少年院を支配していたのです。

 

 この物語のモデルである実在した学校(ドジアー校)で大量の死体が発見され、調査が行われました。当時手を下したであろう人たちも調べられましたが、誰も有罪になっていません。アメリカとは、そんな国なのです。

 今のアメリカも、ちっとも変っていません。黒人や外国人だというだけで警官や、移民税関捜査局(ICE)の職員に逮捕されたり、乱暴されたり、殺されたりする事件が最近も起きています。

 

 マーチン・ルーサー・キング牧師の言葉をレコードで聞いて、勉強することの大事さを知ったエルウッドだったのに、どうしてこんな目に合わなければならなかったのか。悔しいし、つらい運命なんだけど、彼なりに楽しさを見出したり、こっそり勉強したりしていたのに、あのラストはつらかった。

3780冊目(今年21冊目)

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