『女王様の電話番』 渡辺優 26-17-3776
志川は『クイーンズマッサージ「ファムファタル」』という店の、電話予約のバイトをしています。友達に仕事の話をしたら「そんなヤバイ仕事は辞めなよ」と言われてしまい、世間からはそういう見方をされてしまうんだなと初めて気がつきました。でも、自分は単なる電話番だから危ない目に合うこともないし、当分ここにいようと思ってます。
このお店には何人もの女王様が登録しているのですが、志川は美織さんという人が一番ステキだなと思ってたのに、その美織さんが突然失踪してしまったんです。店のオーナーは「よくあることよ」と言って、彼女を探そうとしませんが、志川はどうしても探し出したいと思ったんです。あの手この手で捜索を始めると、美織さんが自分が思っていたような人ではないという話ばかりが聞こえてきます。
志川は、周りから見ると普通の女子に見えているらしいのですが、彼女には誰にも話せない悩みがありました。それは、自分から誰かを好きになることはできるけれど、その人に手を握られただけで逃げたくなるのです。最初はそれが何なのかわからずにいました。友達から「あなたはアセクシャルかもしれない」と言われて、それについて調べるうちに、自分はそれかもしれないと思うようになっていました。
「こういうタイプの人が嫌い」とか、「男はダメ」とか、そういう性指向だったら、他人にも割とわかってもらえるのだろうけど、アセクシャル(無性愛)であることはわかってもらえません。手を握るとかハグするくらいなら大丈夫という人もいるけど、志川のように、とにかく接触することがダメだという人もいます。そうでない人にとっては「不可解」だけど、本人にとっては「深刻」なことのギャップに苦しむ志川です。
元カレの「そのうちに大丈夫になるかもしれないから、またつき合って」という言葉は、サイテーです。「それは治る病気かもしれない」って思ってるのが見え見えだもの。この人には一生理解できないんだろうなぁ。
目の前にいる人をゲットしたいという「ビームが出ている」のが志川には見えるというシーンがあったのだけど、普段はどちらかと言えば鈍感な彼女に、こういう感覚があるというのが面白かったなぁ。これは第三者だからこそ見えるもので、わたしも見たことがありますよ、目からビームが出ているの。本人はきっと気づいてないんだろうな、これは本能が発するものなんだろうなってものを。
世の中にはいろんな人がいること、自分自身でもよくわからない自分のこと、悩んだり、苦しんだり、結局諦めたり、人間ってよくわからない生き物だよね。
美織さんをどうして探し続けていたのか、その答えがわかったとき、志川はちょっと救われたんだろうなぁ。
3776冊目(今年17冊目)
« 『スタイルズ荘の怪事件』 アガサ・クリスティー 26-16-3775 | トップページ | 『私労働小説 ザ・シット・ジョブ』 ブレイディみかこ 26-18-3777 »
「日本の作家 やらわ行」カテゴリの記事
- 『ちょっぴりながもちするそうです』 ヨシタケシンスケ 26-22-3781(2026.01.23)
- 『女王様の電話番』 渡辺優 26-17-3776(2026.01.18)
- 『名探偵ぶたぶた』 矢崎存美 26-6-3765(2026.01.07)
- 『人生はそれでも続く』 読売新聞社会部「あれから」取材班 26-7-3766(2026.01.08)
- 『プリニウス Ⅻ』 ヤマザキマリ、とり・みき 25-362-3758(2025.12.30)
« 『スタイルズ荘の怪事件』 アガサ・クリスティー 26-16-3775 | トップページ | 『私労働小説 ザ・シット・ジョブ』 ブレイディみかこ 26-18-3777 »




コメント