『春にして君を離れ』 アガサ・クリスティー 01/27-26-3785
春にして君を離れ
Absent in the Spring
アガサ・クリスティー
Agatha Christie
writing as Mary Westmacoll
クリスティー文庫81
英国 1944
人生を狂わす名著50で紹介されていた本
ジョーンは、子ども3人を育て上げ、弁護士の夫をしっかりと働かせている自分自身のことを、優秀な妻であり母であると考えていました。嫁に行った娘の具合が悪いと聞き、バグダッドまで見舞いに行き、あれやこれやと世話を焼いてきました。そこからイギリスへ帰る途中で、列車が来なくなり、砂漠の中にあるレストハウスで足止めを食ってしまったのです。
持って来た本も読み終わってしまい、宿のインド人やアラブ人とは会話にならず、仕方なく昔のことなどを思い出していました。
学生時代の友達のことを思い出すと、学生時代はあんなにステキだったのに落ちぶれてしまった人もいて、自分のように真面目に安全な道を歩んでくればよかったのにと思ったりします。
我が子のことを思えば、かなり厳しく育ててきたつもりです。3人の子どもはみな結婚していますが、なぜか皆遠くへ行ってしまったのです。息子には弁護士事務所を継がせるつもりだったのに、農場で働いているし、どうしてそうなったのかと考えても、子どもたちの考えはちっともわかりません。
夫とはうまくやってきたつもりだけれど、彼が過労で倒れた時には、それが何故なのかわからずにいました。
ジョーンは、自分が正しいと思う発言をし、家族にもそれを強要してきました。使用人たちに対しても、きちんとしたお給料さえ払えばいいと考え、決して褒めることなどありませんでした。
そういうことに気づき始めると、あれも、これも、人を遠ざけることばかりでした。
そういうことに気づいたジョーンのこれからは、どうなっていくのかしら。彼女が心を入れ替えたとしても、もう手遅れな気がします。相手に優しい言葉を掛けたとしても、それを素直に受け取ってもらえるのでしょうか。「こんなことを言ったら相手がどう思うのか」なんて考えたこともなかった彼女ですから、相手のうわべだけの言葉や皮肉に気づけるのでしょうか。
夫はきっと、普通の夫婦のふりはしてくれるでしょうけど、心は許してくれないでしょう。だって、大事なことはジョーンに話しても無駄だと諦めてしまっていたのですから
ジョーンのような人は世の中に大勢います。そのせいで苦しむ家族や友人がいます。彼女の子どもたちのように距離を置くことができればいいけれど、それができない人もいます。
解説で栗本薫氏が書かれている「哀しい」という言葉が、この物語を見事に言い表していると思うのです。
3785冊目(今年26冊目)
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