『菜食主義者』 ハン・ガン 26-40-3799
妻のヨンヘが突然「肉を食べない」と言い始めて、驚く夫。「わたしは野菜しか食べないことにしたの。あなたはどうせ朝食しか食べないのだもの。よそでお肉を食べればいいじゃない。」と言われ、しばらくはそうしてきたけれど、妻がドンドン痩せ、衰弱していく姿を見ていたたまれなくなってきました。
・菜食主義者
ヨンヘの夫の視点で、彼のオロオロする気持ちが語られます。妻が訳の分からないことをし出して、いくら説得しても聞かないので、妻の両親や姉に相談してみたけれど、どうにもならない。そんな状況なのに会社の上司との会食会に妻を伴って参加してしまうなんて、この夫、いったい何を考えてるんだろうと思えてきます。
妻の両親と姉に説得してもらえればと思い、会いに行ってみると、みんなヨンヘのことを心配していると口では言うけれど、態度は横暴でしかありません。父親は暴力までふるってしまいます。
・蒙古斑
ヨンヘの姉の夫の視点で語られます。血のつながった家族ではない分、まだ話をする余地はあって、最終的に「肉を食べないということで解決する問題ではない」という所までは辿り着いたけれど。
・木の花火
ヨンヘの姉の視点です。結局ヨンヘの夫も、両親も、彼女を見捨ててしまったので、結局は自分しか残っていないという諦めに近い気持ちでいます。
ヨンヘと姉はずっと、両親の、特に父親の力に押さえつけられて育ってきました。姉は、自分の力でお金を稼ぎ、両親から逃れることに成功しました。でも、妹のヨンヘは、逃れたいという気持ちを、別の方法で実行しているのではないかと思えてきたのです。
ヨンヘは狂ったと、みんな言うけれど、狂ってしまった方が楽なのかもしれません。だって、姉にはすべての重荷が遺されてしまうのですから。
とても重い話なのに、どうして、こんなにもページをめくる手が止まらないのでしょうか。
狂った人として扱われているヨンヘの言葉に共感してしまうのは何故なのでしょうか。
家族とは、愛であることもあるし、重荷であることもあるのです。親の我儘に突き合わさせられる子どもが、そこから物理的には逃げ出せたとしても、子どもの頃にすりこまれてしまった価値観に押しつぶされたら、誰が助けてくれるのですか。
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