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『キッチン常夜灯 夜ふけのオニオングラタンスープ』長月雨音 26-32-3791

Kitchen4

キッチン常夜灯(4)

夜ふけのオニオングラタンスープ

長月雨音(ながつき あまね)

角川文庫

 いつきさんは、レストラン「シリウス」池袋店店長です。最近女性店長が増えてきて、店長会議の時に彼女たちの積極的な発言に、わたしも同じようにすることができないと、モヤモヤした気持ちが溜まっていたのです。デパート内のイベントに手を貸して欲しいと依頼された件で、足りない食器を水道橋の倉庫へ取りに来た帰り、食事をしていこうかと入ったお店が「キッチン常夜灯」でした。

 そこで、製菓部のかなめさんと出会い、話をしながらおいしいものを食べているうちに、どうして自分はこんなにクヨクヨしてたんだろうと気づいたのです。

 会社の「女性活躍」方針の為に女性店長を増やしたことによって、店長ではなくなってしまった男性社員が不本意な移動を余儀なくされてしまったこともありました。店長になったけれど、その重圧に耐えられなくなり、体調不良を起こしたり、会社を辞めてしまう女性もいました。

 自分は「女性活躍」以前に店長になっていたから、今時の若い店長たちとは考え方が違うという思いがあって、若い店長たちとも本社の人たちとも、きちんと話ができていなかったなという事に気づけるようになってきた、いつきさんです。

 

 飲食業では、そもそも拘束時間が長いし、土日に休めないし、夜まで働くことも多いので、自分の私生活が犠牲になってしまうことが多いのです。ですから若い人だと「ライフワークバランスが悪い」といって、この業界を避けることが多いようなのです。大変な割に給料もよくないし、休みたい時に休めないし、気がついたら婚期を逃していたし、なんてボヤキ始めたらキリがありません。

 でもね、自分が選んだ仕事が、そんなにダメなばかりの仕事なのでしょうか? 元々好きで選んだ職種だし、楽しいことだって、やりがいを感じることだってあるって気が付けたのは、「キッチン常夜灯」のおいしい料理と、ステキなホスピタリティ、そして何でも話し合える仲間のおかげです。

 「キッチン常夜灯」のみもざさん(浅草店店長)、「キッチン常夜灯 真夜中のクロックムッシュ」のつぐみさん(本社)「キッチン常夜灯 ほろ酔いのタルトタタン」のかなめさん(製菓部)、みんな悩みながら、前進し続けています。勤続23年のいつきさんも、誰かに頼ればいいのだということをやっとわかってきたようで、ホッとするラストでした。

・プロローグ
・彩りの前菜プレート 始まりの夜に
・思い出のデザート ガレット
・アッシュ・パルマンティエ 希望を重ねて
・落ち込んだ夜のオニオングラタンスープ
・特別な日のブーダンブラン 私にとって大切なもの
・エピローグ

 レストランのお話なので、おいしそうなものがたくさん登場するのですが、今回は「アッシュ・パルマンティエ」(牛ひき肉とマッシュポテトをミルフィーユ状に重ねてオーブン焼き)が特においしそうで、すごく食べたくなりました。

3791冊目(今年32冊目)

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