『地面師 vs. 地面師』 森功 02/24-54-3813
前略 森功殿
私はセキスイ地面師事件で主犯格にされたカミンスカスです。
森さんはこの事件に関してかなり詳しい人だと思います。
森さんは私をどう思っていますか?
ハッキリ言います。私は無罪です。
こんな書き出しの手紙が著者の森功氏に届いたのは、2024年4月25日のことだった。
そこから始まった、著者とカミンスカスの往復書簡は50通にのぼる。
地面師とは、他人名義の土地・建物の所有者になりすまして、偽造書類を使って売買契約を結び、巨額の代金をだまし取る詐欺師です。
ある土地を売買したいとしたら、当然本人と交渉をするものですよね。でも、その本人が病気で入院しているとか、どこかへ引越してしまったとかという情報を地面師は入手します。そうして、年恰好が似たような「なりすましの人」に芝居をしてもらいます。
書類だって、もっともらしいものを用意します。実印の印証がわかっている場合は3Dプリンターで作ってしまいます。ご本人はかなり高齢な方が多いので、耳が遠いとか、言葉が不明瞭なのでと言って、なりすましの人にはそこに座っていてもらうだけで、ほとんどの話は同席する地面師が行うことも多いのです。
本人確認の時に「干支」を聞かれることが多いそうです。高齢者の場合、歳はハッキリ言えなくても干支は間違えないのだそうです。でも、間違えた干支を言ってしまっても、気づかれなかったという話もありました。
ニュースにもなったので、地面師という言葉は知っていましたけど、この本を通じてその手口を知ると、かなり巧妙な部分も多いけれど、とにかく雰囲気を作り出すのが上手いという感じがします。それに対して、被害者になった不動産デベロッパーの弁護士や司法書士たちが意外と適当なんだなということもわかってきました。
この本に登場する地面師たちの名前が「カミンスカス操」とか「内田マイク」とか、何だか怪しそうな名前ばかり。地面師たちは、大きなお金が動く仕事ばかりしているので、破産したり、誰かから狙われたりという事が多くて、名前を変えることが多いのだそうです。でも、カミンスカスは本名で、リトアニア人の奥さんの苗字を名乗っているのだそうです。
積水ハウスやアパホテルが、こんなにも見事に騙されてしまうのは何故なんでしょうね。きちんと調べれば事実との齟齬が分かるはずなのに、と思いながらこの本を読んでいたのですが、実は日本の行政の問題もあるようなのです。売買の対象となる土地に、持ち主が住んでいない場合、管轄の役所が複数になります。すると、この土地の持ち主は誰かを調べるのに手間がかかります。それを知っている地面師たちは、偽造書類で持ち主の住民票を移動させてしまい、縦割り行政を上手く利用しているのです。
高額になってしまった土地を持っていながら、それを誰かに託すことなく、入院してしまったり、認知症になってしまったり、誰にも知られずに死んでしまったりということが、地面師が活躍できる土壌を作っているようです。せめて、固定資産税が滞納になってしまっている物件だけでも税務署が調査してくれれば、こういう事件が減ると思うのですが。
#地面師vs地面師 #NetGalleyJP
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