『家族八景』 筒井康隆 26-67-3826
高校を卒業して、普通なら事務員などの就職をするところですが、火田七瀬には相手の心が読めてしまう能力があって、これがバレてしまわないように、住込みのお手伝いさんをしています。この本に登場する8つの家には、様々な家族が住んでいるのですが、その人たちがみんな、本音と建て前の乖離が酷いのです。
夫婦も、親子も、隣人も、会社の同僚も、外面は良くても、み~んな腹黒い!
七瀬が若い女性という事もあって、こんな小娘に自分たちの心が読まれているなんて誰も想像してません。でも、油断してはいけません。迂闊なことを言ってしまうと、自分の能力がバレるかもしれないので、七瀬はなるべく黙っています。どうしても返事をしなければならないときには、ちょっとオバカなふりもしています。ああ、ひどい家族だなぁって思いつつも、ちょっと楽しんでいるようなところもあります。
最初の方は18歳で、なるべく野暮ったい感じを出していたので、身の危険を感じることはなかったけれど、最後のほうでは20歳になり、彼女は男たちからのイヤらしい気持ちをどんどん感じるようになり、しまいには身の危険も迫り、ついに本領を発揮してしまいます。七瀬を怒らせたらホントに怖い! キャリーに負けないくらい怖いのです。
このままでは危険だから、もうお手伝いさんの仕事はやめよう、という所で物語は終わるのですが、七瀬のこれからの人生は、もっと大変なことになるということがわかっているだけにねぇ。
先日読んだ「女中がいた昭和」から、この本を思い出したんです。昭和47年(1972年)に出版されたこの本、最初に読んだのは、かなり前だったのでザックリとしか覚えていなかったんですけど、再読してみて、この作品の凄さに圧倒されています。筒井さんが描く人間の黒い部分は、時を超越していると思いました。
そして、この本の解説は植草甚一さんです。SFにもミステリーにも精通している J.Jおじさんが、この作品を絶賛しているのがとっても嬉しかったです。
3826冊目(今年67冊目)
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