『仏教を「経営」する 実験寺院のフィールドワーク』藏本龍介 26-87-3846
NHKの「ETV特集 それ、仏教かも。~謎の寺・寳幢寺の実験~」を観て、この寺院に興味を持ちました。
ミャンマーで修行した龍源師は、仏教の教えを伝えるために自身の寺院「寳幢寺(ホウドウジ)」を作りました。ここでは「布施に依拠する」という考え方で運営をしていました。ところが、それでは資金が足りず、不足部分は私財をつぎ込んでいたため、限界が見えてきたのです。
宗教法人として、何らかの宗派の下部組織となった場合、その活動として想定されるのは、葬儀法要・祈祷・観光であり、この寺がやりたい、仏教を伝えるという部分は理解されない。それなら、公益社団法人でやっていこうと考えている。しかし、日本においては布施に依拠した法人さえが想定されていない。また、日本の税法は個人所得のない人を想定していないため、出家者の生活費用を法人持ちにするという試みは、所得隠しの嫌疑をかけられる可能性もある。
宗教法人としてやっていけないので、公益社団法人としてやっていこうとすると、税法的に問題が出てきます。どうするにせよ、「お金」が問題なのです。
龍源師が修行をしたミャンマーでは、僧侶は生活のためのコストがかかりません。
ミャンマーの出家者は独身なので、家族を養う必要がない。一人であるならば、托鉢に出れば食べる分には困らない。自分の寺院がなければどこかの寺院に間借りをすればよい。寺院間の移動は極めて一般的である。寺院の建物自体に文化財としての重要性はないので、布施がないのにわざわざ修復したりもしない。また、ミャンマーでは出家すると「国民」ではなくなる。(選挙権も被選挙権もなくなる)ので、税金を払う必要もなくなる。
この本で知ったのは、日本の仏教は、ミャンマーやタイなどの仏教とは全くシステムが違うということです。彼の地では出家した人を一般の人たちに布施という形で生活を助け、出家した人が仏教を布教したり精神的サポートを与えます。そして、寺は墓を管理していません。
本末制度(ほんまつせいど)は、江戸幕府が仏教寺院を統制するため、宗派ごとに本山(本寺)と末寺の上下関係を固定し、組織化した封建的な支配制度です。17世紀前半に確立され、幕府は本山を通じて末寺を管理し、寺院の創建や新設を制限して、僧侶の統制や民衆の支配(寺請制度)に利用しました。
こうして、人々を管理するシステムの中心に寺が取り込まれました。そして、現在は葬式すらしない人が増え、墓じまいをするのはいい方で、放置されたままの墓が増え、寺院の経営は困難になってしまったのです。
「本末制度」という言葉を初めて知りました。 「本末転倒」というのは、この制度を崩してはいけないという所から生まれた言葉だったのですね。そして、「旦那」は布施する人を呼ぶ語で、元々はサンスクリット語の布施(dāna)に由来しているというのも、初めて知りました。
本来は、心の平安を求めるためにある仏教なのに、葬式仏教と呼ばれるようになってしまったのは、悲しいことですよね。
かつて、アメリカの語学学校に通っていたとき、学生の中にタイから来た修行僧がいました。食事の時に学食には来ますが、自ら食物を取ることはないので、クラスメートが適当に選んで鉢に入れた食べ物を、どんなものであれ残さずに食べていました。そういう姿を始めて見て驚きました。
「仏教は宗教というより“哲学”である」という考え方で運営されている寳幢寺は、日本の仏教の中では特殊な形態ですが、こういう「開かれた」寺院の存在がとても気になります。何か悩みができた時に訪れてみようかと、記憶の端に留めておきたいと思います。
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