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『考察する若者たち』 三宅香帆 26-73-3832

Kousatusuru

考察する若者たち

三宅香帆(みやけ かほ)

PHP新書

 若者たちは、今という時代を敏感に感じて生きています。年寄りたちが過去の経験を振りかざして反論しても、それは今の時代に合っていないと突っぱねられます。これは、昔も今もあることだけど、みんな貧しかった時代は幸せだったのかもしれません。光り輝く人たちは、別の世界の人だったから。

 でも、今の時代は生まれたときから格差が大きいし、それがはっきりとわかるのに、別の世界の人じゃない。そういう人たちが同じ地域、同じ学校の中にいるのです。

 

正解がない批評、正解がある考察

 若者たちは、常に正解を求めていると三宅さんは指摘しています。これまでは、作者が書いた文章に対して、自分はこう思うと意見を発するものでした。作者がAというつもりで書いたものであったとしても、自分はBだと思うなと言ってもいいのです。

 ところが、現代の若者は、作者が提示した正解を知ること、それこそが大事なことだと考えているのです。もちろん、それも大事です。でも、それではテストの問題と解答の世界です。

 いつだったか、こんな話を読んだことがあります。入試問題にある作家の文章が使用され、主人公はどう考えたのか?という問題が出ました。その問題を、作家自身に解答してもらったら、正解ではなかったというのです。

 こういうことを知らずに、「これが正解だ!」と思い込むことの怖さを、わたしは感じます。

 

そもそも、自分の立っている世界のスタート位置が間違っている。だから人生を変えるには、スタート地点を変えるしかない。
そのスタート地点が「現世での自分のスペック」であるとするのが転生ものである。一方、そのスタート地点が「現世を支配しているが気づかれていない悪の権力」であるとするのが陰謀論である。

 転生と陰謀論、これに関係性があるなんて、今まで考えたこともありませんでしたが、とても似た発想なのですね。現在の自分が救われるためには、どう考えればよいのか? それを誰かのせいにすればいいという点では、全く同じとも言えるのです。

 

私たちはプラットフォームの中で、どんどん自分らしさを消して「正解に近い最適解」を出すことを求められている。それが数値で結果を出すための最短距離だ。自分らしさは消えていく。個別性が、意味のないものとされる。報われないからいらないものだとされている。
すると、個人の感想なんて、意味のないもの、正解でないなら出さなくていいものとされるのは当然である。「それってあなたの感想ですよね?」という言葉が流行するはずである。この言葉は、そもそも感想や感情なんて意味がない、という前提が置かれていないと流行しない。
間違っているかもしれない個人的な感想よりも、作者のもっている正解を当てるゲームのほうが意味のあるものだと思えてしまう。考察が流行する理由がここにある。その思考こそが、じつは、プラットフォーム社会に最適化した発想なのである。

 「正解を求めると、自分がなくなっていく」から、就職できても長続きしなかったり、結婚相手に高スペックを求めたり、自分が果たせなかった夢を過剰に子どもに押し付けたり、結局「自分って何?」に追い詰められて薬物に依存したり、自死したりするんじゃないかと、わたしには思えてきます。

 最近どうしても気になるのが、「わたしは〇だと思います」が「個人的には〇だと思います」になってしまっていることです。それは自分を消したがっているからなのでしょうか。

 若者に限らず、年長者たちの発言すらも「~だといいのではないかと思います」になってきたと感じます。強く言いきれない感じが、わたしには歯がゆいのです。たとえば「勝てればいいなと思います」と「勝ちます」では、自分に対する信頼感が全く違います。この2者が競ったら「勝ちます」と言った人の勝ちですよね。

 言葉は言霊だと、わたしは信じています。

 「正解を求める」「失敗したくない」それは理解できることだけど、それで楽しい人生は送れるのでしょうか?

 あとがきで三宅さんもおっしゃってますけど、「あなたの考え」を聞きたいと、わたしも思います。

3832冊目(今年73冊目)

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